第20話 氷の女王を溶かしたら、春の音が訪れた。
春音の髪は柔らかい。
それでいて癖があり、思っている方と逆を向こうとする。春音付になったメガエラは殿下から借りた、癖毛用ミストなるものを春音の髪に振りかけた。
温風魔法で整えながら、編み込み三つ編みで左右を止めた後、髪を結い上げた。
遊び毛はクルンと巻いて、垂らす。ドワーフからの髪飾りを何本か刺すと煌めく髪が仕上がった。何て艶やかで、美しい髪。殿下自ら磨きあげたというから、驚きだ。また、ドワーフの贈物の美しい事。小さなブルーダイヤモンドの付いた髪飾りなんて、見たことない。出来上がった春音を見て、感嘆のため息をついた。
ドレスはアルフの髪色に合わせた、銀と金のレースが縁取られた、白いシルク。上半身はピッタリ体のラインが出るが、
下に降りて行くと、アルフは誇らしそうに、賞賛の目で輝く笑顔を見せた。
アルフは春音と合わせた白いシルクに金の縁どりのタキシード。銀のカフスと銀糸の編み込まれたタイを首元に、
胸元には小ぶりなブルーダイヤモンドのブローチ。縁にはドワーフから贈られた、シャンパンダイヤモンドで縁取らせた。いかにも春音と対に合わせたように、二人並ぶとより映えた。
春音の手をとり、口付けた。
「美しいな。ホラやっぱり、昨日のマッサージ効果で、お肌もツヤツヤだね。」
アルフがあたしの頬を指でなぞった。
実は昨日はアルフがまるでエステティシャンのように、蜂蜜とハーブオイルのお風呂に入れられた所から、磨きあげられた。頭皮マッサージから、全身垢取りマッサージ。クレイパックにミストサウナ。クレンジングの後は美白パック。全身ピカピカにされた。しかも王宮に行ったら、暫く出来なくなるかもしれないと、何度もイカされました。
自分で艶々お肌にしておいて、肌が気持ち良いと、身体中弄られ何度も何度もアルフが果てるまで、貪られました。もう、まだ結婚前なんですけど!?
ミトレスはオレンジの頭をしっかり編み込まれた。派手な鳥の羽根の付いた帽子を付けられた。瞳と合わせた、薄い黄緑色のドレス。ペリドットのネックレスをつけ、足元はやはり、帽子と合わせた派手な羽根が付いている。
高坂は、日頃の訓練のせいか、すっかり引き締まりタキシードも中々、様になっていた。一見白いが、影になるとミトレスより薄い、黄緑色に見えるシルク。二人が並ぶと、華やかだった。
でも、やはりマグノリアさん夫婦が一番派手だった。マグノリアさん。黒のタキシードに赤い髪だもの。大きな体で、迫力が半端ない。胸元に赤いバラ。
アミダラさんはルビーが散りばめられた、真っ赤なドレスに緑の髪だし。
胸元の谷間がくっきり強調されて、ドキドキした。
ミトレスが良いなぁ。胸大きくてと言ったら、高坂が言った。
「何言ってる。ミトレスはスレンダーで、格好良いじゃないか。それに鍛えているから、引き締まって均整がとれている。むしろ羨ましがられる存在だぞ。」
とミトレスを褒めた。ミトレスも真っ赤になって、
「ありがとう。そうかなぁ。」
とまさかのミトレスの乙女の顔。マジかい!幻覚かと思った!
ホウホウ。そんな感じになっているんだ。とニヤニヤしちゃった。
そして、王宮からの馬車が来た。
あたしとアルフ、ミトレスと高坂が乗り込んだ。メイドや付き人はマグノリアさん家の馬車に一緒に乗った。
緊張で顔が強張っていたら、アルフが呟いた。
「やっと皆に春音を見せびらかせるんだ。嬉しくて、たまらないなぁ。もう臭い娘はコリゴリだからね。こんな綺麗で良い匂いの子は他にはいない。きっと男共は悔しがるだろな。」
いつもより饒舌にアルフは興奮していた。
「艶々に仕上げて良かったなぁ。
今度アロマオイルのマッサージで春音の胸元…。」
という所で、アルフの口を押さえた。これ以上は喋らせないんだから。ミトレスも高坂もいるのに。もう!!
でもミトレスが食いついた!
「何ですか殿下!そういえば、春音様の肌、めちゃくちゃ輝いているのは、やはり何かやったんですね!!マッサージですか?パックですか?」
アルフがニヤニヤして、
「全部!思いつく限りの仕上げをしたよ。なんせ披露だからね。触ってごらん。しっとりとして、艶々で玉のようでしょ。」
ミトレス、高坂まで、あたしの腕を撫でた。
「おお!これ今日やってみたら良いじゃないか!明日の舞踏会に間に合うぞ!」
とミトレスと高坂が手を取り合った。
ん?これはやはり。。。
アルフがあたしの腰を寄せて、抱きしめた。見つめ合い。幸せを確認する。そして、二人でミトレスと高坂を見ると、二人は何かゲラ◯とかエスティ◯ーダがどうのと、何でも試してみたいけど、アレルギーはないかとか、カイトが殿下にやり方相談してからだね。どうせ殿下、彼方から色々持って来てるから、貰っちゃおうよとか、あたし等が眼中ない感じで、話している。
二人を見て、アルフとムフフフとニヤけてしまった。最初と違って、すんごい良い感じ。テンポは合うとは思ってたんだけどね、このふたり。高坂は一途だから、気が合えば良いかもよ。
女王との謁見は緊張した。だが、挨拶はきちんと出来た。何度も執事のセルゲイさんに手伝ってもらった甲斐があったな。
女王は銀髪で真っ青な瞳が美しい、出来上がり過ぎなド美女だった!!どんなハリウッド女優でも太刀打ち出来ない、張り詰めた品とめっちゃ良い匂いの方だった。アルフと並ぶと神々しい。
あたしが
「おお、おお!本当にアルフォンスが言うように、何て芳しい。ここまでの香水を、人間の手では作る事は出来ないであろうな。
まるで、神の香りじゃ。この玉座の間、全体に芳しい香りが満ちているぞ。悪臭の残り香さえ、消し飛んだわ。
それにその魔力!!これ程とは!虹色のオーラが光輝やいているではないか。まともに見ようとしたら、我でも耐えられるものではないな。二人の婚約、大変嬉しく思うぞ。むしろ早く結婚するがよい。アルフォンスが居なくても、いつでも我の側に居るが良いぞ。ようこそハルネ。精霊の落とし子よ、我は心より歓迎するぞ。二人なら、このブーケット王国も安泰じゃ。やれ、めでたい。」
女王はキラキラ輝いて、眩しすぎる笑顔で語った。何か聞いていたのと、全然違うんですけど?
「……やっと、この国の喪が明けたのじゃ!嬉しや!今夜の晩餐会、楽しみじゃな。国を挙げて祝おうぞ!」
すると、突然、辺りに沢山の光が舞、入りこんできた。
この結婚、我らが認めよう!!
この国に祝福を授けよう!!
あらゆる精霊が祝おう!!
二人の未来に力を貸そう!!
精霊達の声が王宮を木霊した。
そして、また虹色の光が王宮や街に溢れた。
……女王は喜びで打ち震えた。
「…精霊の声を聞いたのは、何て久しい事か。生きている内に聞けるとは。何て喜ばしい事か。……。ああ、あなた、聞いていて?あなたの息子が、この世界に祝福を運んできたのですよ。」
その後は、女王はアルフに支えられ、玉座に戻った。ハンカチで目を押さえ、暫く涙が止まるまでアルフを掴んだまま、離さなかった。アルフも本当に嬉しそうで、女王に対してというより、母に対して何か言葉をかけていた。女王はそれに対してうんうんと頷いていた。
あたしは胸がいっぱいで涙が溢れた。
アルフの執務室で、あたしはずっとアルフの膝の上で、抱きしめられたままだった。
「ありがとう春音。母上と初めてちゃんと話が出来た。あんなに喜びに溢れた、笑顔をみたのも初めてだった。春音君を心から愛しているよ。君に出会って、僕は初めて幸せを知った。」
アルフは泣いていた。
あたしはそっと背中を摩り、あたしもまたアルフに出会って、愛する事の幸せを知った。ずっと側で支えたいと思った。
………あ〜。こんな時に何ですが、可愛そうなのはまたもや高坂でして、せっかくの女王の謁見はチャッチャと僅か1分程で終わったそうな。
あ〜、女王様プライド高いから、目が赤いの見られたくなかったんだろね。
まあ、こんな感じで無事、謁見は終了した。
でもって今夜は晩餐会。
いよいよ、披露ですよ。
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