第16話 ひと時の安らぎと告白。

 気怠い遅めの朝。

 首筋をクンカクンカしながら、チュッチュッと段々下に潜っていくアルフに起こされた。クスっと笑いながら、アルフはあちこちキスしたり、吸い付いたり、舐めながら毛布の中へ下りていく。



 あ、あ、そんな所、舐めちゃ駄目ぇ。



 吸ったり、舌で敏感な場所を転がされ、指を入れられて、朝からまたイカされてしまった。もう、ズルいわぁ。

 段々上がってきて、あたしの膝を押し上げ、毛布から顔を出したと思ったら奥までグッと、アルフが入って来た。


 朝日を浴びて真っ赤な顔で、表情も隠しようがない。恥ずかしくて、横を向いてたら無理矢理顔を合わさせた。



「駄目だ。ちゃんと僕を見て。感じている春音を見たい。僕の動きに合わせて、恥ずかしくてもいいから、隠さないで全て見せて。」



 腰を動かしながら、乳首をつまむ。



「これは?」



 とか、耳朶から耳の中まで舌を這わせる。



「感じている?」



 とか一番敏感な所を指で押したり、つまんだり擦り付けたりする。



「どんな風に感じるの?」



 とか、あたしの貧弱な妄想の世界なんて、どんだけお子様だったのかが解った。かなりのドSだわ。もう、降参。アルフの手管にあたしは翻弄され、ただ素直に反応した。



「…うぅ、可愛過ぎる。全部僕のものだ。」



 そう言うと、激しく腰を動かしあたしの奥に、アルフの全てを放った。



 その後は一緒に湯船に浸かり、お互いを洗いあった。



 あたしはアルフで満たされ、幸せだった。バスタオルで全身の水分を拭き取られ、髪に温風をあてながら、乾かしてくれた。空間から、レースがふんだんに使ってあるバスローブを出すと、羽織らせてくれた。フワフワで手触り良いけど、ちょっと透けてない?首元は毛皮でゴージャスだけど、レースの部分がヤバイ。超エロい。コラコラどこで用意していたの?いつ使うの想定していた?


 そして、そうだ。



「ここはどこなの?」



 と窓から外を眺めようとして、聞いてみた。


 するとアルフは



「まだ駄目だよ。巣から出ようとしちゃ!」



 と言って、ヒョイとベッドに戻された。春音はまだ、目が覚めていない事にするんだから。まだ誰にも邪魔はさせない。



 とか何とか言って、いつの間にかシーツは新しくされていた。確か……昨日の事で、赤い鮮血が付いてしまっていたから、自分で洗おうと思っていたのに。



「でも、そうだなぁ、お腹空いたよな?」



 と言って、またもや空間からあれやこれや出してきた。


 う〜ん。ろくな物ないなぁ。とブツブツ言って、探している。 カップヌードルとか、ポテトチップスとか、プリンとかコンビニみたい。いやいや、十分でしょ。


 わぉ!食べたかったクイニーアマンがある!フランスの甘いパイ!それにレモンの炭酸飲料。冷たいし、万能なアルフの空間倉庫。



「アルフのこの空間倉庫。どれ位の大きさなの?向こうに行った時、かなり買い溜めしているでしょ?実は。」



 ニヤッと笑ってアルフは指を立てた。



「それは国家機密だからね。まぁ、春音だからね。少しだけ教えてあげると、ジャンボジェット機が何台か、後ヘリとか、戦車は少しだけ入れてあるよ。いざと言う時の為にミサイルは互いを干渉しないように、小分けに分けて……。」



 いやいやいや!あんた何を危ないもん入れてるの?話の路線がズレまくっているし、いざと言う時って?戦争でもおっぱじめる気なの??しかも、それで少しだけって?



「まさか……東京ドームが何個か入りそうなレベルじゃん。」



 ちょっと青くなって、呟いた。



「あるよ!取り敢えず、スタジアムはいつか此方の世界でも、野球を流行らそうと思って、作ってしまっておいたよ。」



 やっぱりね。冗談が冗談じゃ済まないのがアルフよね。


 虹色持ちは色々規格外だとあたしに言ってた意味は、手本が自分だったという事か。


 ついでに異空間倉庫の作り方を教えてもらった。アルフみたいな大規模なものじゃなくて、もうちょい小さめのもの。赤い顔で、女の子は色々必要なんですって言ったら、何故持っているのか、アルフは自分の空間倉庫から、色々とこの先必要そうな物をあたしの空間倉庫へ、ドサッと入れてくれた!

 侮れない。


 本当、いつ買ってきてたの??あたしを此方に連れて行こうと決めてから、購入しに行ったの?用意周到というか、そういう所はやっぱりオカンだわ。


 そんな感じで、今日はイチャイチャラブラブを一日中味わった。


 あたしは甘やかされ、あたしもアルフを甘やかした。今日位はそんな日も、あって良いと思った。ずっと心が休む場所を求めていたアルフを、温め安らげ癒したかった。昨日の胸が締め付けるような、痛々しい姿を見てしまったから、アルフの全てを受け入れようと思ったんだ。


 でも、それってあたしの全てをアルフには与えていないと、気がついた。


 ぬくぬくとベッドの毛布の中で、二人まったりとしながら、あたしはポツリポツリと話し始めた。



「……あの時、あたしは別の空間に連れて行かれたの。」



 アルフは幸せそうな微笑みから、急に真面目な顔になった。


 ちゃんとアルフと向き合おうと思ったから、アルフも向き合って欲しかったし、あの時の事を話す事にしたんだ。精霊に囲まれて、言われた事。

 これから起きるかもしれない予言。

 精霊が力を貸してくれると、約束してもらった事。あたし達がするべき事。


 それと……あたしの言われた本当の名前。あたしが誰なのか。


「…その事は他の人には言ってはいけないよ。真実の名で相手を縛り付ける事が出来るからね。悪用されたら、大変だ。そして、ありがとう春音。僕を信用して、教えてくれて。」


 アルフは自分の顎に手を当て、自身の記憶から思い出すように言った。


「………トーサ・デ・ダナンは古い妖精の一族の名前だな。子供の頃のおとぎ話で、聞いた事があるよ。昔、神がまだいた頃、トーサ・デ・ダナンの一族は神と人間の橋渡しをしていた。その頃は彼等の一族とは親しくて、人間の王族と恋に落ちて、子を成したものもいたという。だが、美しい姿の一族に嫉妬した人間の者達の手によって、忌まわしくも謀り追われた。一族は黄昏の世界に渡ってしまった。神は嘆き、この地を去ったという。そんなおとぎ話さ。」



「…そうか、春音はそんな一族の子孫だったんだ。だから、規格外な魔力やその力を悪い奴らにも、求められるのか。」



 そして、背中からあたしを抱きしめた。



「沢山、子孫を残すのは僕の仕事だね。」



 と言って、また首筋に舌を這わせた。



 そこに食いつくのか。やっぱり。

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