第15話 精霊達の歓迎会。そして、歓喜の夜
あたしは両親に愛されて育った。
母も父もあたしの為に、時間を惜しまなかったし、いつも話も聞いてくれた。友人もごきげんような人たちとは無理でも、イベントで知り合ったアニオタ同士や、BL友好祭の友達とは朝まで語り合った。
アルフや高坂みたいに、孤独を感じる事が無かったといえば嘘になる。
でも二人ほど、辛いと感じた事はない。まして、1人っ子だし、家族に亡くなったものはいない。
今回、あの怖いお姉さんに狙われて初めて、恐怖を感じた。あの人にはあたしに対する、明確な悪意があった。
力を欲しての事だろうとアルフが言ってたけど、あたしより力があるのに、何であたしが必要なの?
あの時、アルフが止めに入ってくれなかったら、死んでいたかもしれない。欲深いものは現状を常に満足出来ない。罪を犯して追われた身なら復活を願って、もっと力を手に入れようとするものなのか、ならば
アルフはそんな中で育ったんだ。あたしには想像出来ないような、恐ろしい目に今まであってきたんだろうな。
あたしも強くなりたい。
そして、守られているだけの存在にはなりたくない。あたしだって、アルフを守ってあげたい。
次の日はオーラを見る方法とか、周りの敵を見つける検索魔法、その派生版のマッピング機能、アルフに借りた地図を、見たものを一瞬で記憶する魔法で記憶してから、検索をかけるとちゃんと地図上に検索結果が浮かぶようになった。これは便利だね。防御魔法や本当の隠密の魔法。物を軽くする魔法を教わった。
大きな岩を片手で持ち上げたら、アルフが額に手をあて、苦笑いしていた。マグノリアさんが来て、呟くように言った。
「殿下。これは、 尻にひかれそうですな。」
ニヤニヤ笑いながら、からかった。
転移魔法はレベルが足りないから、レベルが上がるまでは覚えられないと言われた。
ええ〜。やって見なくちゃ、分からないじゃん。とブー垂れてみた。
そして、これだけ一日で色々覚えられたのは凄い事なんだと、諭された。
普通は魔力が枯渇するし、一つ一つをマスターするまで、何日も、人によっては何ヶ月も、時間がかかるらしい。教わったその通りにやっても、出来るものではないらしい。
後は精霊を呼び出す、召喚魔法を教えられた。アルフは呼んでも、時々声を聞くだけらしく、姿を見た事はないらしい。お姉さんを亡くした時、彼女の加護する光魔法を呼び出し、
聖なる光魔法を信じてきれていないので、回復魔法の力が弱いらしい。
ただアルフもこの時までは、せいぜい同じ位だろうと軽く考えていた。
もし精霊の姿が見えたとしても、ここまで大事になるとは思っていなかった。
後々、あれは必要な事だったといくらあたしが諭しても、己の浅はかさにずっと後悔していた、過保護なあたしのアルフ。
あたしは精霊達を呼び出す魔法を唱えた。
「あたしを加護する精霊達よ。願わくば、姿を現したまえ。」
すると、いきなり周りの景色が変わった。アルフが何か言っていたが、姿がかき消えていく。
あたしは大きな岩山の上に、座らされていた。
そしてその周りを取り囲むように、様々な姿の精霊らしき者達があたしを見ている。体を岩に覆われた大男。
空を浮いている、青い髪の美しい女性。全身鱗が付いた、男女。炎を纏う男性。眩しくて良く見えないが、人らしきもの。全身真っ黒なズルズル長いロープを来た男性。冷気を
まるで、映画のセットなのか?
随分お金がかかっているなぁ。メイクとか大変そうなどと、呆然とした。
あ、いやいや、特撮とかじゃなかった。ここは異世界だし、あたしが魔法で呼んだんだった。
「我らに祝福を授かった王族が、再びこの世界に帰ってきた。」
金髪ギラギラな人が叫ぶ。
「トーサ・デ・ダナンの子孫よ。我らはお前を保護する者なり。呼べばいつでも、
大きな岩のような大男が聞く。
へ?誰の子孫だって?
何とかで、ダナン?
皆があたしの言葉を待つ。
うわぁ、緊張する。
「あたしが望むのは平和な世界です。どうか、皆さんの力を貸してください。」
何とか言えた。フゥッ。
すると全身真っ黒なズルズルロープの男性が前に出た。目が黒から白に変わり、話し出した。
「近々、お前の居る国で災いが起こる。最初は小さな
真っ黒い杖を天に掲げた。そして、黒い男性は背中を見せず、前を見た態勢のまま、後退した。
そして次は頭から、白く薄いケープをかけた女性が前に出て、水晶をはめ込んだ杖を掲げ叫んだ。
「我らの加護する、王の子孫に祝福を!その身を捧げよ!ハルネ・デ・ダナンに力を授けるのだ!」
あたしの全身が光輝き、眩しくて目を閉じた。温かいものや熱いもの、冷たいもの、強いものがあたしの中に入ってくる。痛くはなかった。
そして、様々な声が聞こえた。
お帰り愛しい娘。待っていたわトーサの娘よ。愛を与えよう。お前は世界に愛を運び、癒すのだ。復讐したくなったら、声をかけよ。いつでも、破壊の力を授けるぞ。私は知恵を授けよう。
そうだ!世界に再び我らの力が溢れるのだ!お前の力を世界に示すのだ!
そして、この世界に、お前の血筋を沢山残すのだ!!力を持ったお前の一族で、平和な世界を取り戻せ!!
沢山の歓喜の声……。
あたしの周りを回り始めた。歌うものまでいる。あたしも一緒に笑い、踊りながら皆と回った。
目眩がして、段々歌も喜びも、声も遠くに聞こえて、やがて消えていった。
……。
その後はよく覚えていないや。
気がつくと宿屋ではない、豪華な部屋の
アルフはあたしを抱いたまま、眠っていた。温かくて、うっとりする匂いに包まれている。
深く吸い込んで、堪能した。
相変わらず、絹のような長いバサバサ
こんなにじっくり見ていられるなんて、幸せ。
その頬に触れたくて、手を動かすと毛布の中は何一つ身につけていない、裸だった事に気がついた。
あ?まさか、アルフも裸?
うひゃっ。
アルフの目がゆっくり開いた。
「ん、、起きたの?まだ、夜中だよ。もうちょっと、眠ってても良いよ。……あ、あ。そうか。」
アルフは大きく欠伸をした。
グルンと横向きから、アルフはあたしの体を下にして、上に覆い被さった。裸なのに、腰から下はピッタリ肌を合わせていた。
え、え、と、あの、うひゃ〜。
「……そうだね。やっと気がついたんだね。良かった。目が覚めないかと思ったよ。」
チュッと額にキスをした。
そして、ジッとあたしの目を見てアルフは話した。
「あの後、……春音が召喚魔法を唱えた後、春音の姿が急に消えたんだ。
気配まで、この世界から消えた。急いであちらの世界まで、気配を辿ったけど、どこにも春音の気配も残り香さえ、消え失せた。……まるで、最初から春音など存在しないかのように。」
僅かに震えている?アルフ?
「あれから、何日も日が経ったが、手がかりさえない。僕も召喚魔法で精霊に相談しようとしたが、駄目だった。他の者にやらせても、精霊が誰も応えてくれなかった。魔法も普段より弱くなっていて、何が起きたのか、全くわからなかった。
そして、3日目の夕方、例の魔法を練習していた場所辺りに、突然春音の気配がした。春音の匂いがその場所から離れた僕の側まで、呼ぶように香った。」
アルフは
「……恐ろしかった。こんなに恐怖を感じたのは初めてだった。
…もう、春音に二度と会えないのかと思った。春音に怖い思いをさせて、精霊が許してくれなかったのか、もう戻してくれないのかと。」
こんなに涙を流しながら、全身を震るわすアルフは初めてみた。
いつも、余裕で微笑んでいて、強くて、自分の過去を話す時さえ、その身の辛さ等をあたし達に気取られないよう、気を配っていた。
「春音が姿を現した時は本当に嬉しくて、匂いを嗅いだ時は喜びで狂ってしまいそうだった。
だけど、春音はひどく冷たくなっていて、
体をピッタリ付けたまま、あたしの手や横腹を
「良かった。戻って来てくれて。また僕の側に居てくれて。」
そう言うとあたしの口を開かせ、深く舌を絡ませた。
「あ、あ、春音。側にまた一緒に居てくれるんだよね?もう何処にも行かないよね?」
確かめるように、アルフはあたしの顔を覗き込んだ。
あたしはトロトロの顔で、うんうんと頷いた。
「…ずっと一緒にいる。もうアルフの側から離れない。この先、何があっても、あたしはアルフの味方だよ。」
そう言って、あたしはアルフの頭を抱えて、舌を絡ませ深く口付けをした。
何度もアルフの問いかけるような、舌使いに応えた。……いいのかい?
アルフはあたしの首筋の匂いを嗅ぎ、震える手であたしの体を
そして腰や足であたしの足を開かせた。彼の手が下がり、あたしの一番敏感な場所を指で
そして、あたしの手を自身の硬くなったものへ沿わせた。あたしは優しく弄った。
アルフはあたしの顔を、怖い位の真剣な眼差しで見つめた。
「……本当に良いんだね?」
あたしは喘ぐ声しか出てこなかったから、思いっきり頷いた。
そして、アルフは今まで見た事がないような、優しくて幸せな微笑みをするとあたしの中に自身を沿わせ、一気に入って来た。
貫かれた瞬間は痛みで悲鳴が出たが、一つになった喜びですぐにアルフを求めた。
アルフは激しく口を貪り、胸を揉みしだき、あたしの匂いを嗅いだ。優しさも脱ぎ捨て、あたしの全てを欲しがった。あたしの敏感な部分を指で
あたしもアルフの全てを感じ、その愛撫に応えた。もっと、もっとと。アルフは今まで相当我慢していたせいなのか、激しく奥深くまで差し入れて、何度も中で果て、再びあたしを貫いた。あたしも何度も歓喜で喘いだ。
この人はあたしのもの。
あたしはこの人のもの。
こうなるのが運命だった。
何故、今まで抗っていたのか、不思議に思った。あたしの中の精霊達も、一緒に喜びで溢れている。
…そうだ。もっと全身で喜びを感じろと。愛し、愛されよと。
最後は貫かれたまま安心するように二人で果てた後、眠ってしまった。
精霊に予言された災いが起こったとしても、その時あたしはこの人を守りたいと思った。アルフの悲しみも喜びも全てがあたしにも伝わり、この日、アルフの全てを受け入れた。
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