第11話 苦難は続くよ。ど〜こまでも〜。
「いい加減、離しなさい!」
高坂はミトレスに蹴りを入れられ、ゴロンと転がった。
「ご、ごわがっだ〜〜!」
オイオイ!鼻水が今にも、口の中に入りそうだよ?
あ〜。。。
アルフは額に手をあて、ため息を吐いた。
「困ったなぁ。」
そして、腕を組みどうするべきかと考えこんでいる。
「ちょっと!どうしてついてきちゃったの?こんなんじゃ、本当にあんたってストーカーみたいだよ!」
ボロボロで
「だって、お前をどこかに連れて行くって話、聞いちゃったし、実際消えちゃう所を、目の前で見ちゃったんだよぉ〜。俺はお前の事また守れなかったと思って、必死にこの人に一緒に連れて行ってくれるよう、頼んだんだ。」
更にグシャグシャで、エグエグ泣きながら高坂は言った。
すかさず、ミトレスは
「違うでしょ!!連れて行けないって言ったのに、執こく
ビシィッと高坂を指差し、怒鳴った。
だよね。そんな気はしていた。弱った。こんな不思議も魔法も満載な異世界で、あたしを守るってだけで、アルフに負担がかかっているのに、この上更に高坂までなんて、あたしも流石に頼めないよ。
ミトレスは高坂の側に行き、彼を立たせた。そして彼の肩に手を置いて、何やら呟いた。ん?なんか、、。
凄い魔力を感じるよ?それに、、なんかミトレスの目、、真っ赤じゃない?
「大丈夫。春音様は必ず殿下や私がお守りするから、お前は何も心配する事はない。向こうに戻って、今の気持ちも全て忘れて、今まで通り平穏に暮らすが良い。」
そして、アルフの方を向き
「申し訳ごさいません。魔力が戻るのに時間がかかるかもしれません。一旦向こうで休ませてください。
アルフが返事しようとした所を遮って、高坂は叫んだ。
「イヤだ!今、何かしようとしただろ。そんなの効かないからな!!
藤島を守る為に、俺は絶対に戻らない!!」
!!!
「ほう。魅了も、忘却の魔法も効かぬか。中々やるな。だが勘違いするな!
春音様を守るだと?この世界でお前に何が出来る?魔物に襲われて手も足も出せず、死ぬのがせいぜいだろう。お前では足手まといになるだけだと何故解らぬ。大人しく戻れ!」
オウ!ミトレス怖い。
素朴な赤毛のアンじゃ無かったのぅ?
完全に高坂とミトレスは二人の世界に入っていて、あたしやアルフが何を言っても、言い争っていて、聞いちゃいない。でもさ、間の取り方とか、実はすごい気が合うんじゃない?
掛け合い漫才みたいだもの。
ぶはっ!
あはははははは。
アルフは我慢出来なくなって、盛大に笑い出した。そりゃあね。移動中もずっとグフグフ我慢してたしね。
スッキリしましたか?
「は〜〜っ、いやいや、これは逸材かもしれないな。…彼の事はミトレス、君が守ってあげなさい。何なら戦い方を教えてあげても、良いんじゃないかな?戦力は一人でも多い方が良い。」
ええーー!?マジで?
うはぁ、、。
ミトレスは「ははっ!」と敬礼をした後、凍るような目で、高坂を睨みつけた。
高坂はアルフに
「ありがとうございます!きっと戦力になれるよう、頑張ります!」
とミトレスの殺気も気にせず、キラキラと瞳を輝かせて、何度も頭を下げた。
アルフはあたしの肩に手を置き、グッと体を引き寄せた。
「では、そろそろ行くとしようか。暗くなる前に移動したい。」
チラッと高坂を見て、ニヤッと笑った。そんなアルフの高坂を牽制するような態度に「ウグッ」と高坂は唸った。
あたしはちょっと周りが気になって、二人のやり取りはスルーした。
「ここは何処なの?不思議な建物ね。何か宗教的なもの?壁はひび割れて古いのに、何故か床は真新しい。それに外の音が全然聞こえないわね。何か魔法が効いているの?」
アルフは驚いた顔で、あたしをまじまじと見た。
「春音の洞察力は凄まじいな。全部当たりだよ。この建物はかつて、この世界に神がいた時代の名残だ。床が真新しいのは魔力に触れたからだね。魔力に触れると、細胞が活性し結果、細胞が若返る。音が聞こえないのはお祈りの邪魔をしないように、魔法がかけられているからなんだよ。」
アルフと見つめ合って和やかに話している途中、ズガガガーン!!と大きな音がした。びっくりして思わず、アルフにしがみ付いてしまった。
ミトレスが扉を蹴破っていた。
「失礼しました。封鎖の魔法だったようです。」
あわわわわ。やっぱり、クサクサしているのかしら。心臓に悪い。
「古い魔法で、扉が開かなくなっていたみたいだよ。しかし、解除の魔法を使わず、蹴破るとは。。。」アルフは笑って言った。
やっと外に出られた。
眩い光、風は足、頬、そして体全体を撫でた。暖かい風がくるくるとあたしの体を包む。
(お帰り、愛しの娘よ。)
え?
「どうやら、大歓迎のようだな。見てみろ。」
建物は小高い丘の上に、建てられていた。下を見ると、森や街が見える。そしてそれを覆うように、虹色の層が辺りを輝かせていた。病院の窓で見た光景と、全く同じ現象がおきていた。
「精霊の贈物か。、、、まさかな。」
アルフは、はぁ〜っとまたもやため息を吐いた。
あれ?妖精の贈物じゃなくて?
アルフに質問すると教えてくれた。精霊とは自然そのもの。また自然に起こるあらゆるものに含まれる、水、風、炎、大地、光、闇、その他にも様々な精霊の力がある。妖精は特にその力を使うのが得意。でもこの世界の住人だったら、魔力のあるなしに関わらず、精霊の力を借りて生活しているそうな。でも、厳密に違いが分けられない場合もあるらしくて、精霊のような妖精もいたり、人間のように人間と暮らすエルフ族という者も居る。
エルフ族は精霊に愛され、妖精に違い人種。同じように、ドワーフ族も精霊に愛された人種だが、人間と一緒に暮らす事はない。山にこもって、人間にお宝を横取りされないよう、監視しながら生活している。ただ、気に入った人間には時々、ドワーフの宝物を贈ってくれるらしい。ドワーフの宝物はドワーフ達が作った技術で、
力の無いものは使う事も、身につける事も出来ないと言われている。
「君のお友達も向こうの人間なのに、少し体を魔力が覆っているようだよ。赤い魔力だね。まあ、この世界の人間に比べたら少ないけどね。鍛えれば、何とか自分の身を守るくらいは、出来るようになるんじゃないかな?」
ふむ。赤い魔力?
「人によって魔力の色が違うの?前にあたしとアルフは虹色って言ってたわよね?魔力の色の違いは?」
「何色の魔力を帯びているかで、その人の本質が決まるんだ。彼は赤い魔力だから、炎の魔法に
思い出して、
「虹色の魔力は特別。何故か?それは全ての魔法を使える権利があるからね。全ての精霊が力を貸すし、鍛え方に寄るけど、大賢者にだってなれる可能性がある。魔力が特別に強い者が持つ事の出来るオーラだよ。」
アルフはあたしの目を真っ直ぐに見て言った。
「だけど、ここまで精霊に祝福された人間は見たことがない。そして、それは良い事ばかりじゃないんだ。
ごめん、春音。ちょっと走るよ。」
いきなりあたしをヒョイッと肩に担ぐと、アルフは全力で走り出した。
うひゃ〜〜!何このスピード!目が回りそう。後ろで高坂の叫び声もついてくる。
後方になんか灰色の獣の姿が見える。あれって魔物?
これが魔物ホイホイの魔力ぅ〜!?
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