第9話 異世界へスカウト!それ今じゃないと駄目ぇ?

「アルフが異世界人なのは解ったけど、それで?アルフはどうしてこちらの世界に来ているの?大体、そんなあちらとこちら、行ったり来たり出来るものなの?」



 聞ける時に聞かないとね。



「僕は時々、此方こちらの世界を監視しているんだ。此方こちらの世界で魔力を使って、本来あるべきではないものを作り出したり、歴史を変えるような影響を与えられないようにね。


 何故か、彼方あちらの世界にも此方こちらの影響が出るんだ。

特に魔力を使った場合はね。だから時々、監視して酷い事になっていないか確認に来るんだ。そうだね。ある程度以上の魔力を持っていて、転移魔法が使えるのなら、そう大変ではないよ?だから君の両親も今頃、彼方あちらに行っているんじゃないかなぁって思ってさ。」



 楽しそうに笑っている。



「勿論、身の危険を案じている事もあるけど、魔物ホイホイな春音に、彼方あちらの世界での仕事を少し手伝って欲しいんだよ。


 あ、勿論、報酬は弾むよ。春音もレベル上げておけば、魔法も学べるし、うまくいけばご両親みたいに、あっちとこちらを行きき出来るかもしれないじゃない?良い話だと思わないかい?」



 あ〜あ、失敗したなぁ。

何でも聞いて良いて言われて、聞けば聞くほど後悔してきた。聞かなければ良かった。あたしまだ学生だよ?

高校だって、後一年もあるのに。



「まぁ、此方こちらの世界に来るには許可が必要だから、手続きをとった上での話だけどね。実際にご両親に会えば、春音が誰のお嬢さんか判るんだけどね。」



 フゥッとため息をつき、チラとアルフを見た。瞳が楽しげに輝いちゃって。キラキラ王子が!



「別に、このままでも良いんだよ。僕はね。ずっと側で守れる自信はあるよ。」



 ええ?本当?ぱあっとアルフに顔を向けると、更に呟いた。



「皆には僕の姿を見えなくして、ずっと一緒に居られるようにすれば良い。でも、君も困る時あるでしょ?ホラ、トイレとかお風呂とか?僕は構わないよ?僕が側に居れば、奴らは近寄って来ないだろしね。」



 ニコニコして、嬉しそうだ。



 くぅ!

このキラキラスケベエロ王子!

それじゃあ、只のストーカーじゃん!



「はぁ、分かりましたよ!でも、まずは両親と連絡をとらせてください。それから、一旦、日本に帰らせて欲しいんですけど、学校の問題とか、色々あるので。」



 あたしの存在のせいで、変なのが寄ってくるのなら、皆に迷惑がかかるって事だもんね。とりあえず、前向きに検討するって事で。



「じゃ!退院の手続きをしてくるから、ちょっとだけ待ってて。僕の部下に見張らせておくから、着替えだけしておいてね。」



 抗議したが、完璧スルーして、あたしを立ち上がらせ、ぎゅっと抱きしめると手早くキスをし、じゃっとウィンクして立ち去った。その間、1分も無かったんじゃね?


 は?退院?確か、あたし未成年だから、保護者か学校の先生の同意がなくちゃ、退院出来ないとか言われたはず。



 それに部下って?



 気配を感じ、はっと顔を向けるとアルフが居た場所辺りにオレンジ頭で後ろに一本の三つ編みをたらした、華奢な感じの少女がニコッと笑って、ベッドの柵に手を乗せて立っていた。


 ちょっとソバカスがあって、赤毛のアンみたいな子。え?今ドア開けた?

これもなんかの魔法?あれ?さっき魔法使うと影響出るとか言ってなかった?魔法使わなくても、出来る事なんだろうか……。


 ん?

女性の部下って、そんなら、お風呂とかはアルフが見守らなくても、大丈夫じゃない!!あ、トイレは流石に恥ずかしいか。



「この度、春音様の側仕えとして、参りました。ミトレス・シンバル・トロワと申します。お着替え、お手伝いさせていただきます。春音様」



 リンと鈴が鳴るような、大きくはないが、よく通る声。


 お手伝いって、もう体力も回復したし、自分で出来るからと断ったが、全然聞いてくれなくて、いきなりパジャマをかれ、あたしのスーツケースからいつのまにか、ちゃっちゃと外出用の白いワンピースを取り出し、あたしの頭に被せた。その上から濃紺のジャケットを着せると、ブラシで髪をザクザクすいた。あれよあれよと考える暇もなく、僅か10分程で、支度が整った。



「では殿下が戻るまで、座って待っていましょうか。」



と椅子に腰掛けるよう、促された。


 ムム………。殿下?

なんじゃそりゃ。そうだ!アルフを待っている間、ミトレスに色々聞いてみよう。



「アルフって、向こうの世界ではどんな人なんですか?その……人柄とか、立場とか?」



 此方こちらの世界の監視なんて、軍人とか?でもまだ若いし、部下も若そうだから、そこまで上の人間じゃないわよね?殿下とか何かわかんないけど。


 手持ち無沙汰にスマホをいじるふりをして、さりげなく聞いてみた。


 部下さんはう〜んと考え込んだポーズをすると



「そうですねぇ。殿下は沢山の人達に慕われて、尊敬される存在です。」



 へ〜。尊敬されているんだ。只のチャラチャラエロ王子じゃないんだ。



「それはもう、我が国の象徴ですから。」



「へ?…象徴?」



思わず声が裏返ってしまった。なんか、また嫌な予感がするんですけど。



「はい。アルフォンス・ベル・ドール様は我国、ブーケットの第一王太子ですわ。つまり、次期国王となられる方です。」



 ウゲッ!!!

 本当に王子だったんかい!!

 嫌な予感はよく当るわ!!

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