第214話塩見頼勝
「塩見殿、こちらの提案を全て飲んでくれてよかったよ」
「いえ、我が塩見家も赤井家の圧力に苦心しておりました、赤井家が権大納言様の旗下に馳せ参じた以上、同じように旗下に入るか滅びを覚悟して戦うほかに手はございませんでした」
「そうか、最初に塩見殿に声をかけるべきだったかもしれないな」
「とんでもございません、あの時は赤井家が有利に戦いを進めておりました、権大納言様が赤井家に矢止めを命じて下さったこと、近隣の国衆地侍は心から感謝しております」
「そうか、皆の力になれたのならよかった」
「そこで六衛府で働かせていただく子弟の事でございますが、嫡男以外全員でも宜しゅうございますか?」
「構わないが、塩見家はそれで大丈夫なのか?」
「はい、知行地は半分以下になりましたが、減った分は扶持として京や大宰府で輸送の手数料なしで受け取る事が出来ます。安心して文武の修練に励むことが出来ます。それに権大納言様に逆らって、戦を仕掛けるような馬鹿はおりますまい」
「国衆や地侍には不服な事もあろうが、天下の大乱を納め太平の世を開くには、大名・国衆の力を削がねばならぬ。召し上げた領地には、種子島家直属の郷士や武士を入植させるから、過去の境界争いも無くすことができるだろう」
何時ものやり方なのだが、近隣の国衆や地侍は必ず領地争い水利権争いを持っていた。とは言っても公家や国衆から奪い合っていたから、どの時代を基準にするかで持ち主が変わってしまう。今の基準は朝廷重視だから、公家が所有していた平安時代を基準にしている。
だが武器を持ち戦う技術を習得している国衆や地侍は、自分の不利になる条件など絶対守らない。だから俺が召し上げるのは、そう言う争いがある土地を優先している。今回も塩見家から召し上げたのは、公家から横領していた土地や、塩見家に滅ぼされた国衆や地侍が過去に公家から横領していた土地に、赤井家などの近隣国衆との係争地だった。
絶対王者と言える俺の譜代家臣が、緩衝役として入った事で、両家とも戦いを始める意味がなくなっているのだ。
「それで御相談なのですが、我が子弟に相応しい姫君は権大納言様の御家中におられるでしょうか?」
白虎の言っていたように、塩見家は俺に全賭けする心算のようだ。嫡男以外全員を六衛府に送り込む国衆は多いが、子弟全員の嫁を俺の家中から迎える家は少ない。嫁を迎えると言う事は、家中にスパイを送り込んで下さい、やましいことは絶対しませんと言っているようなものだ。福知山城を拠点として、天田郡に強固な地盤を築いている塩見家が完全に臣従してくれるのなら、少々家格が上の娘を嫁がせても十分見合う。重臣たちと誰を嫁がすか相談しないといけないが、俺の養女にしてでも送り込もう!
「よくぞ言ってくれた、家格に見合う優秀な姫を紹介させてもらおう」
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