第212話荒木氏義・江田行範・川勝広継

 さて、波多野家を直接どうこうすることはできない、そこで波多野家と同盟・縁戚・家臣と言った関係にある者を調略することにした。根こそぎ調略して戦う力を無くさせたい気持ちはあるが、そこまでやると俺の評判が悪くなるから、狙うのは当主か子弟に将来有望な者がいる家に絞った。


 1人は細工所城主・荒木氏義で、子弟に妖将来有望な者が多い。しかも細工所城は、摂津池田を発して篠山を抜けて綾部に通じる街道を望む山上にあり、城から見れば西方に波多野家の居城・八上城を遠望できるのだ。ここを拠点に出来れば、波多野家の動きを常に見張る事ができる。その上に、この城からは京から丹波に進軍するのが丸見えで、波多野家が敵対した場合は、我が軍を迎え撃つには格好の立地にあるのだ。


 細工所城の縄張りを見れば、荒木家の所領から考えれば本丸は意外に広く、帯郭がめぐらされ、内堀・外堀、堀切など防御施設も整っている。大手門は縦六メートル、横十六メートルという堂々たる構えで、七つ谷、馬の背などと呼ばれる多くの谷や峰が続く要害堅固な城なので、波多野家が裏切った場合に京に攻め込まさせず、丹波で押し止めるためには最適の城なのだ。


 荒木家を滅ぼしたり転封させて城地を奪うのは、俺の評判が悪くなり今後に差し障ってしまう。だからここは、子弟や一門衆を六衛府に取り立てて優遇し、特に子弟には有力家臣の娘を嫁に出す事にした。これにより荒木氏義を波多野秀忠から離反させる事に成功した。


 1人は綾部城主・江田行範と言う男で、波多野家でも重臣として重きをなしており、調略出来ればよかったのだが、今のところ脈がない。あまり露骨なんこともできないし、子弟も並みより少し有望程度なので、無理せずにゆっくり調略する事にした。


 


 ここまで波多野家を切り崩していると、九条禅定太閤殿下が、いつもの様に准三宮・鷹司兼輔殿下と鷹司関白殿下を伴ってやってきた。タイミング的に波多野家へ手出しするなと言いに来たかと思ったのだが、今回は荘園を横領していた川勝広継の処罰問題だった。もちろん酒と肴は遠慮なく飲み食いするのだが、それ以外にも無理難題を持ち込むから困るのだ。


 川勝広継は光照と名乗ることもあるのだが、戦国の世を戦い抜き市場村を横領して京都北方に勢力を振るうようになっていた。広継は菅原神社の門前市場を保護し、そこからあがる収入を確保するため、島城・今宮城・中村城を築いて外敵に供えた。菅原神社の門前市場を確保すれば、城を3つ築くくらいの収入があると言う事だ。また、菩提寺である臨済宗光照寺を築くなど宗教勢力も取り込み、領内の整備を図り有力な国衆へと発展していた。


 だが今は市場村は種子島家の直轄領としており、菅原神社の門前市場も種子島家の代官が管理運営している。川勝広継が菅原神社・光照寺を味方につけて、朝廷に働きかけて代官職を取り返そうとしていたが、いくら九条禅定太閤殿下・鷹司兼輔殿下・鷹司関白殿下の話でも聞けることと聞けないことがる。丁寧にお断りした上で、島城・今宮城・中村城の城門・土塁・塀を完膚なきまで破壊してやった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る