第92話朝鮮との交易
1539年2月『筑前国・大宰府』種子島少弐時堯・11歳
対馬国を支配下に置いて以来、俺の指示で朝鮮との交易を大々的に行っている。そもそも朝鮮との交易問題がこじれたのは、朝鮮側が輸出品の綿布(朝鮮木綿・唐木綿)が在庫不足になることを恐れたからだった。
朝鮮では貨幣・銭がほとんど流通していないし、一時的に紙を原料とした貨幣・楮貨も流通したが信用されず、民が使いたがらない事もあり時代と共に暴落した。朝鮮通宝という銅銭や箭幣も作られたが、国家の収税に使う程度で、世の中の流通を助ける通貨としての役割を果たせなかった。だから物々交換か、米・麻布・綿布が貨幣代わりだった。だからこそ綿布が在庫不足になる事を朝鮮は恐れたのだ。
一方日本側の輸出品は胡椒・丹木・朱紅・銅・金などだったが、そもそも金銀銅などを国外に流出させる訳にはいかない。
そこで莫大な量の銭が明国から流入して、物価高となっている日本の銭を朝鮮との貿易使用してみることにした。もちろん九州から産出する金銀銅で通貨を鋳造することも検討しているが、それはまだ実行までには至っていない。
そもそも金銀銅に関しては、俺が生産させた高級商品を輸出して得た分だけを輸入に充てるしている事にしている。貿易赤字は絶対認めていない。まあ鯨・鮫から作った高級商品と各種真珠・赤珊瑚に蝦夷・樺太から仕入れた高級食材でウハウハの貿易黒字を続けている。
朝鮮にも利益が出るように、転売目的でもあるのだが高麗青磁・螺鈿漆器・虎皮・豹皮・高麗鷹・朝鮮牛・韓紙・朝鮮人参・覆盆子・麦飯石などを輸入している。
ただ後々の事も考えて、麦飯石に関しては日本国内でも産出するので、国内から確保するように切りかえたし、朝鮮人参は国内で生産できるように種を密かに手に入れ栽培させている。高麗青磁・螺鈿漆器・韓紙などの職人も密かに招いて、日本国内で生産が始められるように技術導入をしている。
だが1番の輸入品は奴隷だったりする!
一方種子島家からの輸出品は、通貨として使う銭はもちろん王侯貴族が欲しがる石鹸・シャンプーなどの高級品と、肝油・真珠などの高級漢方薬、更には朝鮮で生産できない針などの工業品だった。
「少弐様、朝鮮国はこのままで国が成り立つと思っているのでしょうか?」
福丸朱雀には、朝鮮王家の中枢で権力を振るう両班の行いが納得出来ないのだろうな。
「両班階級は、自分たちが権力闘争で勝ち抜く事と、目先の利益さえ上げられればいいのだろう」
「しかしこのまま優秀な職人を奴隷として売り払っていては、国の力が衰えてしまうのは理解しているのでしょう?」
「理解出来ていても、今の権力闘争に勝ち抜かなければ生きて行けないのだろうし、理解出来ないような愚か者なら、そもそも国の行く末のことなどどうでもいいのだろうな」
「可哀想なのは民でございますな」
「この国で幸せに暮らせるようにしてやればよい」
「は!」
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