第93話九条禅定太閤殿下3度目の下向

1539年3月『筑前国・大宰府』種子島少弐時堯・11歳


「禅定太閤殿下、またも下向して頂き有り難き幸せでございます」


「また大弐殿の会えてうれしいでおじゃる」


「禅定太閤殿下の御蔭を持ちまして、官職を進めていただき大宰府の大弐なる事が出来ました、誠にありがとうございます」


「他人行儀な事を申すと寂しいでおじゃるよ、大弐殿は麿の義弟ではないでおじゃるか」


「もったいなお言葉、ありがとうございます」


「大弐さま、禅定太閤殿下を屋敷にご案内いたしてはどうでしょうか?」


「おおそうであったな、禅定太閤殿下、どうぞこちらにおいでください」


 大宰府にある九条禅定太閤殿下の屋敷は綺麗に掃き清められている。いや大宰府だけではない、筑後鷹尾城・大隅国分清水城・大隅根占城・肥後八代城・日向土々呂城内にある屋敷も、いつでも飛んで遊びに行けるように綺麗に掃き清められている。


 俺が空を駆けて巡るので、侍女も小人も手抜きが出来ないのだ!


「兄上様、よくぞ下向して下さいました」


「おお、おお、おお、兼子でおじゃるか、よく迎えてくれたでおじゃる」


「大弐様から、今日兄上様が大宰府に着かれると聞いてお待ちしておりました」


 九条禅定太閤殿下の屋敷には、妹の兼子を待たせてあった。久し振りの兄妹の対面だ、交通機関が発達しておらず、しかも戦国真っ最中だから、普通なら無事に京と大宰府を往復できる保証などないのだ。


 まあ種子島海軍艦隊での往復だから、万が一の事はないとは思うが、村上水軍が全力で奇襲して来たら、撃退は出来ても禅定太閤殿下が犠牲になられないとは言い切れない。いや摂津国や大和国・紀伊国での陸路の途中で、三好家や畠山家の奇襲されたら護りきれない可能性もある。


「おばうえさま!」


「まぁまぁまぁ! 初子殿なの?」


「はい! おはつにおめにかかります! はつこともうします!」


 叔母と姪の感動の初対面だ!


 そう今回の禅定太閤殿下の下向には、一粒種の娘・初子殿が一緒に下向されている。禅定太閤殿下にとってもただ1人の実子を、京に残しておくのが不安だったのだろう。なにより京の親戚、二条家に預けていては、種子島家のような贅沢な生活はとてもできない。


 まあ今回も3000石程度の荘園を山城国に買って、種子島家の将兵が代官としてガッチリ守っているから、そこに預ける手もあるのだが、親心としては1分1秒でも一緒にいたいんだろう。


「つもる話もあるでしょうが、お腹もすかれておられるでしょう、まずは食事といたしましょう」


「おうおうおう! 大弐殿の作ってくれる料理は久し振りでおじゃる! とても楽しみでおじゃる!」


 今回は正月に元大名や国衆に出した料理をほぼ再現した物を出しているが、それに加えて禅定太閤殿下には各種のチーズを盛り合わせた物を、初子殿の為に羊羹・外郎・どら焼きを用意してある。喜んでくれればいいのだが。

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