第38話戦線拡大

1536年4月『肥後・八代城』種子島左近衛将監時堯・8歳


「若殿に願いとはなんだ?」


「は! 左近衛将監様には菊池家の姫を妻に迎えていただき、菊池家の当主になって頂きたいのでございます」


「若殿は種子島家の嫡男であられる! 他家に養子になど行けるはずがないではないか!」


「そこは種子島家と菊池両家を合わせた当主となって頂き、菊池の姫との間に産まれたお子を後継者にして頂けないでしょうか?」


「確かに菊池は名家ではあるが、今の種子島家は朝廷より正三位の位を頂き3カ国の太守を拝命しておる。幕府からも3カ国の守護職を頂いておるのだ、いずれはそれに相応しい姫君を正室にお迎えすることになる」


「だからこそでございます! 今の若殿ならば正室が2人3人いてもおかしくはありますまい」


「式部大輔、菊池家は政隆・武経・武包・義武と4代も内紛による養嗣子が続き、式部大輔の隈部家もそれに加担していたであろう!」


「それは・・・・・」


「国衆が生き残るために色々画策することを悪いとは言わん、だが余をだませると思うな!」


「それは違います、だまそうなどと思ってはいません!」


 俺は今回の侵攻で相良家さえ占領出来ればよかったのだが、他の家まで次々と降伏臣従してきた。しかも阿蘇家が降伏臣従してきたことで、菊池家の内紛にまで介入させられそうになっている。


 この菊池の内紛は長く続いているうえに、今では大友家が弟を無理矢理に菊池家の当主にさせている。ところが菊池家当主になった弟・菊池義武が、事もあろうに大友本家当主の座を狙って、兄・大友義鑑を相手に戦争を始めてしまったのだ。


 しかも菊池義武は、中国地方の雄・大内義隆に援軍を頼んでいた!


 大内義隆は1530年から九州に度々戦争を仕掛けていた。豊後国の大友家や筑前国の少弐家を攻撃し、北九州を支配下に置こうと画策していたのだ。


 このような状態の菊池家に介入するなど本来なら絶対お断りなのだが、伊東家を降伏臣従させた時に一緒に降伏臣従した、米良家当主・米良石見守重次が菊池能連の隠し子だったのだ!


 家臣に対してエコヒイキ・不公平があってはならない。本来相良家の傍流である上村兵庫允長種を助けて相良家の家督を継がせたのに、菊池家の正統な後継者である米良石見守重次を助けない訳にはいけなくなってしまった。


 長らくの内紛で、菊池一門・家臣団は肉親間の恨み辛みが折り重なっている。だがら俺が介入する条件として全員が集まって今までの事を水に流すことを誓わせた。そして米良石見守重次は菊池家の名跡を継ぐが、菊池一門・家臣団は俺の直臣とすることになった。


「菊池家系図」能運の代に内乱が激化し他家からの養嗣子が続く

菊池持朝・為邦・重朝・能運・政隆・武経・武包・義武

              米良重房(能運の隠し子)・米良重則

     為安・重安・政隆(本家養子)

           重順・政照・政徳

             ・重基

                 武経(阿蘇家から無理矢理養嗣子)

                    武包(詫摩武安の子が養嗣子)                                    義武(大友から無理に養嗣子)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る