第39話八面六臂

1536年4月『肥後・八代城』種子島左近衛将監時堯・8歳


 俺は大忙しだった!


 出来るだけ戦争を拡大させたくはなかったのだが、頼ってくる国衆・地侍が途切れないのだ。しかも貧民が農地を放棄して逃げて来るのも途切れない、これが俺を決断させる事になった。


 俺は100度以上も転生しているから、この世界この時代に極めて近い所も経験している。それと同じと判断すれば、今の日本の総人口は1500万人くらいだろう。だが日本の耕作面積を全て効率的に開発できれば3000万人位は養えるのだ!


 いや、農業改革を推し進め蝦夷・樺太も支配下に置き、続いて産業改革も推し進めれば1億人を養うことが可能だ。ここは少々無理をしてでも九州全域を支配下に置くべきだろうと考え、九州中を飛び回り城門を破壊して回ると言ういつもの戦法をとる羽目になった。


「若殿、今日はどちらを回られるのですか?」


「天草から五島を回る予定だが、時間があれば壱岐にもよるかもしれない」


「そうですな、そろそろ艦隊と海兵隊を投入して島々も支配下に置く頃合いかもしれませんね。しかしながら、あまり無理はなされないでください」


「分かっている急ぐつもりはない、だが降伏臣従の使者を送ってきた国衆の周りの城だけは脅しを掛けて、支配下に入った国衆は護ってやらなければならない」


「左様でございますな、それは仕方のない事でございますな」


 当番である時政青龍が、心配をしながらも俺の今日の予定を確認して来る。まあ俺の予定を聞いておかなければ、家臣や商人からの謁見依頼に返事が出来ない。それになにより神の申し子と信じられている俺が、いつ神の国に帰ってしまうか心配と言う切実な想いがある。


 何度もこの国に骨を埋めると言っているのだが、どこからともなく俺が神の国に呼び戻されると言う噂が湧いて来るのだ。


 まあそれは置いておいて、とにかく実際の戦闘が起こってしまうと死者やけが人が出てしまう。だから降伏臣従の使者を送ってきた国衆・地侍にも、大友や大内だけでなく近隣の国衆が攻めて来たら城に籠って守りに徹するように伝えてある。


 万が一守り切れない場合は、殺される恐れのない場合は敵に降伏臣従してもよいと伝えている。そして殺される恐れのある時は、必ず城地は取り返してやるから種子島領まで早々に逃げてこいとも伝えてある。少なくと実質的に完全支配下に置いた肥後の国衆・地侍は護ってやりたい。


 時間があったので壱岐国(壱岐島)の砦に毛が生えた城の城門も破壊したが、壱岐は対馬の1/3の面積なのに、耕作地は逆に対馬の3倍もあり1万6000石近い。しかも朝鮮との貿易にはもってこいの湊でもあるので、肥前に本拠地を持つ波多家が支配下に置いていた。


 俺としては波多家などの松浦党から切り離して、種子島家の支配地域にしたかった。そこで侵攻に必要不可欠な、海軍の再編成も進める事にした。今回の再編成は、船の種類によって操作性が大きく違う為、艦隊を組んでの行動がし難いので、同じように動ける船同士を組ませて艦隊とすることだ。


 南蛮船は南蛮船同士で艦隊を組ませ、合いの子船は合いの子船同士、和船は和船同士で艦隊を組ませた。特に風上に進むには乗組員にオールをこがさねばならない小型船・小早船は、苦戦にならない限り漁業に専念させ、領民の食糧事情改善に専念させたかった。

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