第13話開墾・商品開発

 1534年10月『大隅・富田城』種子島犬楠丸・6歳


「お前たちに言って聞かせることがある、誠心誠意奉公すれば奴隷から解放して農地を与える、手柄を立てれば武士として取り立ててやる!」


 俺の言葉を通訳が奴隷たちに翻訳して伝えている、明国内でも民族や地方によって言葉が違うので、明国の奴隷を買い取った当初はいちいち翻訳して伝えなければならない。


「海軍に配属された者は、漁業や交易はもちろん海戦の機会もある。その度に奴隷から脱するチャンスだと思って働くように」


「若殿、陸軍に配属した者はどうなされるのですか?」


「常に訓練させるが、同時に屯田兵として開墾に従事させる」


「しかし大隅の地は不毛な台地がほとんどでございます」


 大隅平定戦で、進んで俺に降伏臣従してきた石井石見守義辰が大隅が耕作に向かないことを進言してきた。確かに稲作を水田で行うのは難しい、だが俺はサツマイモを手に入れているのだ、他にも大豆・油菜・粟・蕎麦・麦なら栽培することが可能だ。特に薩摩芋・大豆・油菜を上手に栽培すれば、炭水化物・蛋白質・脂肪の三大栄養素を摂取することができる。


 それに莫大な富があるから、玄米を輸入して扶持として配布することが出来る。だがら耕作した薩摩芋・麦は焼酎に加工して付加価値つけて売ればいい。何より手柄を立てた者に与えれば、アルコール欲しさに働いてくれるだろう。いや消毒用のアルコールは早急に必要なのだ、合戦で傷に泥が入ったら、破傷風を発症して死ぬ事もあるのだ!


 だから傷口を消毒する薬としてのアルコールは大量醸造しなければならない!


「大丈夫だ石見守、南蛮や明国から大隅の大地でも耕作できる作物を手に入れている。これからは決して民を餓えさせはしない!」


「若殿さま! 有り難き御言葉を賜り、臣・義辰は感激いたしました」


「領主として当たり前の事だ、だが同時にそれを実現するには力も必要だ、石見守にも戦ってもらうぞ」


「お任せください」


 もちろん膨大な知識と急激に増える足軽労働力を活用して、小規模ダムと堤防・踏み車・汲み上げ器・水車・用水路を整えて新田開発を行った。直ぐには無理でもシラス台地に水田地帯を創り出すことを諦めている訳では無い。交易の邪魔をされて、兵糧の輸入が防がれた時の対策も立てているのだ。


 次に俺が行ったのは、桜島の火山を利用しての塩の生産だった。もちろん大隅国の海岸線で、塩田に適したところは全て入浜式塩田・流下式塩田にして行く心算だ。だが同時に火山の地熱を利用して海水を蒸発させ、少しでも薪や労力を減らした製塩法を試させた。


 塩も商品として色々試作させているのだが、先ずは塩の結晶の大きさで商品としての価格を変えてみる。まあどちらにしても、砂などが混じっていないことが最低条件の品質管理をさせてるので、今まで日本や明国で流通していた塩とは雲泥の差がある。まして柚子・蜜柑・金柑・蓬・各種花など色々な香り風味を加えた超高級加工塩が完成すれば、種子島家の輸出商品の柱の1つになるだろう

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