第11話再上京

 1534年8月『種子島・種子島城』種子島犬楠丸・6歳


 数日後根来から津田監物殿が船団を仕立ててやってこられた。


「どうかな犬楠丸殿?」


「よき出来でございますな! 流石に根来の鍛冶は腕がいい!」


「うむ、犬楠丸殿に太鼓判を押してもらえば安心だ!」


「ええ、この出来なら使うにしても売るにしても強気の交渉ができるでしょう」


「では犬楠丸殿に買って頂こうかな?」


「鉄砲は鍛冶衆の修練も兼ねて自前でそろえますよ、それより弓矢と甲冑、何より軍船が欲しいのですが?」


「軍船ならば龍涎香で支払ってくれるのかな?」


「はい、軍船の出来がよければ」


「それは任せてくれて、紀伊の良質な材木を使って建造させた、これからも長い付き合いをしたいからな」


「しかし根来衆が龍涎香を欲しがるとは思いませんでした」


「日々のお勤めの際に香を焚くのでな、高僧の方々が龍涎香を欲しがられるのだ」


「なるほど分かりました、仏道のために必要とあれば、日頃は手放さない白龍涎香で支払わせていただきますが、かなり高価になりますがよろしいですか?」


「いや並みの龍涎香で構わないよ」


「よろしいのですか?」


「ここだけの話だが、本当は女と戯れる際に使うのだ!」


「なるほど分かりました、そういう使い方ならそれに相応しいものをお渡ししましょう。差額は監物殿が根来に本当に必要と考える物にお使いください」


「そうか! それは助かる」


「その代わりと言っては何ですが、今回も父上様のことよろしくお願いいたします」


「任されよ、今回も上京も必ず無事にお届いたそう」


「護衛の軍船や兵が増えた分、無用の敵意を受けて余計に危険が増すかもしれませんので、各水軍衆への再度の根回しお願いいたします」


「うむ、確かにお引き受けした」


 今年も父上様は上京される予定なのだが、去年と同じだけの献金と献納を朝廷と幕府に行う予定なのだ。それによって支配下に置いた大隅国大隅郡を正式に種子島家のものと認定させたい!


 同時に去年と同じように相模まで足を延ばし、大きな交易を行う心算だ。北条家には今年もいくと伝えてあったし、奥羽の軍馬や産物の対価に石鹸や蝋燭を売ると約束してある。何よりも金銀や粗銅を手に入れたいと思っている。


 だが父上様が大隅から離れるとなると、肝付などが大隅に攻め込んで来る可能性がある。そこで俺が一時的に大隅に入り、種子島と屋久島は新太叔父と譜代衆に任せる心算だ。


 そこで問題となる商人衆との交渉なのだが、俺が大隅富田城にいる間は種子島への渡航・入湊を禁止し、根占湊での交易だけとする。そのためにも大量の物資を富田城・野間城・瀬脇城へ運び込む予定だ。


「種子島家上京艦隊・兵力」

小早船(20丁櫓・40兵)10船・400兵

関船 (40丁櫓・90兵) 5船・450兵

ジャンク船         5船・450兵

ブリック          2船・ 80兵

スクナー          2船・ 80兵

フリゲート         1艦・200兵

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