第29話アゼス魔境探査1
「無理をするな」
「申し訳ありません殿下」
謝る近習の一人に回復魔法をかけるが、よくやってくれている方だ。
相手の魔獣があまりに常識外れなのだ!
見た目はただのブラッディウルフでしかない。
百頭を超える群れとは言え、金級でしかない魔獣のはずだ。
並みの冒険者ならともかく、爺に鍛えられた門弟出身の近習衆なら、軽く倒せる魔獣のはずなのだ。
近習とは言え、何時敵に回るか分からないのが王侯貴族の権謀術数が渦巻く王宮だから、俺の本当の力は隠している。
近習衆には俺の魔力は白金級だと言ってある。
それでも王家王国の筆頭魔導士に次ぐ魔力だから、並みの魔導士など相手にならない。
その俺が近習衆にかけた防御魔法と身体強化魔法を突破し、攻撃を届かせることが異常なのだ!
白金級の身体強化魔法で強くなっているはずの近習衆に攻撃を届かせ、白金級の防御魔法を突破する攻撃を、金級でしかないはずのブラッディウルフにできるはずがないのだ。
しかも近習達は、高速移動が出来るように魔獣の革で作られたハードレザーアーマーで全身を覆っている。
それも鉄級や銀級の魔獣ではなく、白金級のハードクロコダイルの皮を特殊な方法で鞣し強化した革を重ね合わせて使っているのだ。
流石に魔法陣を彫金して強化したフルアーマープレートには及ばないが、ただの鋼鉄製のフルアーマープレートよりも強固で、金級のブラッディウルフの牙や爪が効果を発揮できるような、柔な防具ではないのだ。
「気にするな。見た目はブラッディウルフだが、中身はビッグウルフ以上だ。油断せずに盾を活用した上で、更に攻撃を受け流すようにしろ」
「「「「「は」」」」」
全員が気合を入れ直してくれるが、ここは戦術を変えるべきだ。
俺が実力を隠さなくてもいい、近習の中でも最側近の者だけで探査隊は編成すべきだ。
だが、一般的な近習衆の実力を知るいい機会でもある。
ここはもう少しだけ奥に進むべきかもしれない。
魔境に入って直ぐに撤退したとなると、近習衆も面目を失い他の者達にあわせる顔がないだろう。
「麻痺」
「睡眠」
「麻痺」
「睡眠」
「「「「「殿下!」」」」」
「陣形を組んで群れの中に突っ込み。動けなくなったブラッディウルフを確実に斃す」
「「「「「は」」」」」
白金級の魔法を四連発したので、恐らく白銀級に強化しているだろうブラッディウルフも、半数近くが麻痺や睡眠状態となり、その場で動けなくなっている。
この機を逃さず、円陣を組みながらブラッディウルフ達が倒れている場所にたどり着く。
後方の防御が疎かにならない速度で、それでも精一杯の速さで移動する。
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