第30話アゼス魔境探査2

 近習衆が鎧通しで確実にブラッディウルフに止めを刺す!

 剣を使って確実に急所を攻撃できればいいのだが、それが難しい状態になっている。

 斬るのでは剛毛・硬皮・脂肪層・剛筋・強骨に阻まれ、心臓や脳に攻撃が届かない恐れがあるのだ!

 そこでフルアーマープレート同士で戦った場合に、鎧の継ぎ目などの急所を刺突する武器である、鎧通しで心臓と眼球を一突きするのだ。

 しかも万が一討ち漏らした場合の事も考慮し、四人一組で心臓と眼球を狙う攻撃組と、ブラッディウルフが死なずに反撃してきた場合に、盾で防ぐ組に分かれるほど慎重に取り組んだ。

「ウォ~ン」

 俺達が確実にブラッディウルフを斃しはじめると、ブラッディウルフが円陣の全周囲から総攻撃をしかけてきた!

 ブラッディウルフのリーダーが、俺の魔法攻撃で麻痺したり眠らされたりした配下が確実に殺されると判断し、それを防ごうとしたのだろう。

 ドーン

 ガーン

 とてもブラッディウルフの攻撃とは思えない体当たりや爪撃が、近習衆が構える盾に加えられる。

 俺のかけた白金級防御魔法を突破する実力があるのは既に理解しており、覚悟を決めて態勢を整えていたにもかかわらず、それでもこれほどの衝撃を受ける事に驚いてしまう。

 だが流石に初めて攻撃を受けた時のように、腕や脚に噛みつかれるようなことはなくなった。

 ブラッディウルフの攻撃の内、爪撃と体当たりは盾と体捌きを工夫する事で、致命傷を受けずに受け流すことが出来るようになった。

 だが鋭い牙を使った噛みつきは、喉に受けると致命傷になり、腕や脚に受けると骨を噛み砕かれ、喰い千切られる危険すらあった!

 だから牙の攻撃だけは受けないように、あえて爪撃や体当たりを受けているという面もある。

 何とか六匹のブラッディウルフに止めを刺したところで、余りにブラッディウルフの総攻撃が激しく、これ以上攻撃に集中出来ない状況となった。

「円陣強化」

 俺の指示を受けて、今迄鎧通しで麻痺したブラッディウルフに止めを刺していた近習衆が、鎧通しから長槍に武器を持ち換え、総攻撃をかけているブラッディウルフを牽制した。

 今迄はブラッディウルフの総攻撃を盾で受けるだけだったのが、長槍で迎撃したり反撃したりするようになった。

 これで一気にブラッディウルフの圧力が低下した。

「麻痺」

「睡眠」

「麻痺」

「睡眠」

「「「「「殿下!」」」」」

「何としても耐えろ。余が麻痺魔法と睡眠魔法で一匹残らず動けなくする。その後で止めを刺すのだ」

「「「「「は!」」」」」

 このまま何もなければ、この方法でブラッディウルフを斃せるはずだ!

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