第3話水沢競馬場グルメ
水沢競馬場:入口入って直後
「おじちゃん、お姉ちゃんお腹空いたって」
「そうだよ、お姉ちゃんお腹空いてるんだよ」
「ごめんなさい、ずっと食欲がなかったので碌に食べてなかったんです。でもお陰様で死ぬ気がなくなって、急にお腹が空いてしまって」
「ああ大丈夫ですよ、僕も競馬場グルメと言うのを食べてみたかったので、でも水沢競馬場は何が名物なんだろう?」
「私調べてみます」
スマホか、使いこなせれば便利なんだろうけど、今の俺じゃ無理だな。通話はガラケーの方が便利だと言うし、携帯はこのままでいいとして、Wi-Fiでノートパソコンを使って調べもの出来ないだろうか?
「え~と、水沢食堂のホルモン煮とジャンボ焼き鳥が名物だそうです。モツとコンニャクをニンニク、ショウガ、ミソ、ショウユをブレンドしたダシで煮込んだ、あっさり味の食べ易いホルモン煮だそうです。それとジャンボ焼き鳥は、地元では有名な小山鷄を1口では食べ切れないくらい大振りに切り分けて、高級料理店で使う七味と塩をブレンドしたもので味付けするそうです。しかも表面がパリパリになるように、15分かけて身を焼いた後に皮を焼くそうです」
「話を聞いているだけでお腹が空いて来るね、早く食べに行こうか」
「え~と、他にもあるそうなんですが」
「まずは何か食べて力をつけようよ、どうせ1日いるんだから、他のは昼から食べればいいよ」
「はい!」
「お姉ちゃん元気になった~」
「お姉ちゃん元気~」
ホルモン煮 :500円×4=2000円
ジャンボ焼き鳥:400円×4=1600円
「これ本当に美味(うま)いわ!」
「はい、美味(おい)しいです!」
「僕も好き~」
「花子も好き~」
「え~と、そういえば、私まだお名前をお聞かせいただいていなかったですね」
「そう言えばそうでしたね、俺は勝也と言います。お嬢さんの名前を聞かせてもらってもいですか?」
「私は綾香と言います」
「綾香さんですか、それで何か話しかけようとされてました?」
「あ、はい、ちびっ子ポニー乗り場と言う場所で、小学生以下の子なら無料でポニーに乗せてもらえるそうです。それと内馬場遊園地と言うところもあるそうで、すべり台やブランコなどの遊具が充実しているそうです」
「そうですか、調べて下さってありがとうございます。太郎君と花子ちゃんはポニーに乗りたいかい?」
「ポニーてなに?」
「ポニーてなあに?」
「小さな馬だよ」
「「乗る!」」
「じゃあ行きましょうか、綾香さん」
「はい!」
「ボクもいくよ」
「花子もいくの!」
「ああ、みんなで行こうな」
「あ! お馬さんだ~」
「お馬さん~」
「静にしなさい、馬が怖がるだろ」
「「はい、ごめんなさい」」
水沢食堂からちびっ子ポニー乗り場に行くまでの間には、出走前の競走馬を見るためのパドックがあるのだ。真剣に賭け事をする人にとっては、各競走馬の体調や精神状態を確認する、本当に大切な場所なのだ。水沢競馬場のパドックは、日本中の競馬場の中でも珍しい存在で、本馬場と同じ砂が使われた丸型パドックだ。しかもレトロと言うのか貧乏と言うべきかは別にして、掲示板も手書きで、とてもいい味を出している。
「あ~、あの子元気だね」
「うん元気~」
「この子も元気~」
「黒の子元気~」
こりゃ不味い!
「太郎君と花子ちゃん、ほんと駄目だよ、みんな真剣に見てるんだから、大声出しちゃ迷惑なんだよ。それで今の話なんだけど、どの子が1番元気なのか小さな小さな声で教えてくれるかな?」
「う~んとねぇ~、あの子が1番元気~」
「花子もあの子が1番元気だと思う~」
よしよし、6番が頭だな
「今くらい小さな声で、次に元気な子を教えてくれるかな?」
「今一番前に来てる子~」
「花子もそう思う~」
よしよし、2番目は3番だな。
「よしよし、同じように小さい小さい声で3番目を教えてくれるかな」
「3番目~、3番目はね~あの子だよ!」
「花子もあの子だと思うな~」
よし、3番目は1だな、これで買う馬は決まったけど、お婆さんに絶対の信頼を置いちゃいけないと言われていたし。地方競馬じゃたくさん買い過ぎるとオッズが暴落してしまうから、100円づつ買う事にしておこう。それに着順が入れ替わった時に悔しい思いをしたくないから、馬連副と三連複も買っておこう。
でも、でもだ!
こんな場所に太郎君と花子ちゃんを置いて馬券買いに行って、万が一の事があれば絶対祟られるよな!
どうしよう?
本当に太郎君と花子ちゃんの予想が当たるか、今日1日は確認に徹しようか?
JRAならパッドを持っているから、予想が的中するのが確認出来たら明日のJRA日曜開催競馬場に移動する手もある。JRAなら勝ち馬投票金額も大きいから、1万円づつ買ってもそれほどオッズが暴落する心配もないしな。
くっそ~、せめてキャリーバックとバックパックをコインロッカーに預けておけばな~、綾香さんとのゴタゴタで預けに行けなかったんだよな~。
「あの~、私が太郎君と花子ちゃんを見ていましょうか?」
「いいんですか!?」
「はい、大丈夫ですよ、キャリーバックも見ていますから置いて行ってください。何か買いに行かれるのですよね?」
「ええそうなんです、そうなんです、そうなんですが」
こんなきれいな女性を幼い子供達とだけでここに待たせる、しかもでっかいキャリーバックを預けて。最近おかしな奴が暴れ回る事件も増えている。何かあったら絶対祟られるな!
「バックは大丈夫なんで、太郎君と花子ちゃんの手を繋いで、僕と一緒に買いに行ってもらえますか。綾香さんのような綺麗な女性と子供達だけを置いて、僕1人で馬券を買いに行くなって無理なんで。何度も何度も連れ回すことになってしまうんですが、一緒に行ってもらえませんか?」
「ええ、気になさらないでください、何度でもお付き合いさせていただきます」
「お出かけするの?」
「花子もお出かけする」
そうだ!
第1レースの馬券買ったら地方競馬を買えるサイトに登録しよう!
普段日用品を買ってるサイトが地方競馬のサイトも運営してたから、上手く行けば第2レースからでもサイトから、馬券購入出来るはずだ。あのグループのネット銀行口座も持っているし、そのネット銀行を通じて宝くじも買っているから、大丈夫だろう。宝くじ、宝くじも当たるんだろうか?
「じゃあ行こうか!」
「第1レース結果」
単勝 : 6: 620円
複勝 : 6: 320円
3: 290円
枠連複:なし
馬連複: 3-6: 2100円
馬連単: 3-6: 5760円
ワイド: 3-6: 660円
1-6: 180円
1-3: 210円
三連複:1-3-6: 630円
三連単:6-3-1:14890円
小計2万5660円ー掛け金1000円=24660円
よっしゃ~!
とったどぉ~!
全部的中したぞ~!
「おじちゃんうれしい?」
「おじちゃんとってもうれしい」
「本当に嬉しそうですね、競馬とやらが上手くいったのですか?」
やばい!
完全に表情に出てた。
「ああ、太郎君と花子ちゃんの御蔭で上手くいったよ、また小さな声で教えてくれるかな?」
「いいよ~」
「花子も教えてあげる~」
「ありがとう! 綾香さん、何度も何度も同じ場所を移動することになりますがいいですか?」
「ええ、それは大丈夫ですよ」
ちびっ子ポニー乗り場:順番待ち中
1レースの結果を待ってる間に、地方競馬を買えるように手続したけど、第2レースに間に合うんだろうか?
「あの、勝也さん。競馬が上手くいったか見に行かなくて大丈夫なのですか?」
「はい大丈夫です、お陰様で携帯から買える手続きが直ぐに出来たので、ネットで結果も確認できますから」
「勝也さんのその古いガラげーでもインターネット出来るのですね」
「ええ、もう15年近く昔になりますが、さっき話していたJRAと言うところのネット投票がしたくて、その為に買った機種なんですよ」
「そうなんですね、私何も知らないんですね」
「いやいやいや! むしろこんなことは知らない方がいいんですよ」
「そうなんですか?」
「そうなんです!」
「おじさん、お馬の番が来たよ」
「花子が次だよ!」
「太郎君も花子ちゃんも、これが終わったらまた小さな声でどこ子が強いか教えてくれるかな?」
「いいよ~」
「花子もいいよ~」
「ありがとう!」
水沢競馬場パドック:予想中
「第2レース結果」
単勝 : 4: 160円
複勝 : 4: 150円
1: 210円
枠連複:なし
馬連複: 1-4: 490円
馬連単: 4-1: 540円
ワイド: 1-4: 100円
4-5: 100円
1-5: 100円
三連複:1-4-5: 100円
三連単:4-1-5: 680円
小計2430円ー賭け金1000円=1430円
1日合計2万6090円
「第3レース結果」
単勝 : 1: 100円
複勝 : 1: 100円
2: 130円
枠連複:なし
馬連複: 1-2: 180円
馬連単: 1-2: 170円
ワイド: 1-2: 110円
1-3: 110円
2-3: 170円
三連複:1-2-3: 160円
三連単:1-2-3: 340円
小計1570円ー賭け金1000円=570円
1日合計2万6660円
第4レースの出走競走馬の強さを、太郎君と花子ちゃんに教わっている間に、綾香さんが第2レースの結果をスマホで調べて教えてくれた。第3レースに関しては場内放送で知ることが出来たが、綾香さんも何の興味もない競馬に付き合わされて暇なのだろう、色々と手伝ってくれて暇つぶしてしてくれているようだ。
ネットで購入出来るようになったから、いちいち馬券売り場まで移動しなくて済んで楽にはなったのだが、必ず太郎君と花子ちゃんにパドックで馬を確認してもらわなければいけないので、競馬場内の他の場所の見学は30分で往復する必要がある。これが結構な制限となり、内馬場遊園地で遊ぶなどと言う事は不可能になってしまった。
「うんとねぇ~あの子が1番元気~」
「花子もあの子が1番元気だと思う~」
よしよし、3番が頭だな
「今くらい小さな声で、次に元気な子を教えてくれるかな?」
「2番目はあの子~」
「花子もそう思う~」
よしよし、2番目は7番だな。
「よしよし、同じように小さい小さい声で3番目を教えてくれるかな」
「3番目はね~あの子だよ!」
「花子もあの子だと思うな~」
よし、3番目は6だな、今度のレースは高配当ならいいんだけど。
「お姉ちゃんお腹空いてる~」
「お姉ちゃん、さっきのじゃお腹一杯ならない~」
「ごめん綾香さん! 俺自分のことばっかりで、さっき調べてくれていたとこに食べに行こう!」
「いえ、あの、そんなにお腹空いてはいないんですよ」
「お姉ちゃん嘘ついてる~、本当はお腹空いてるもんね~」
「そうだよね~、花子知ってるもんね~、お姉ちゃんお腹空いてるもんね~」
「教えてくれてありがとう、でもお姉ちゃんが恥ずかしいから、太郎君も花子ちゃんもそれくらいにしような」
「「なんでぇ~」」
「その話は皆に聞かれると恥ずかしいんだよ、おじさんにだけ小さな声で教えてくれると嬉しいな」
「わかった~」
「花子もわかった~」
「勝也さん、丸大食堂の中華ざると勝カレーが名物なそうなんですけど、中華ざるはシンプルに麺の味を愉しめるそうです。勝カレーは、大きいカツやゴロゴロのジャガイモが食べ応え十分で、それほど辛くもなくて、子供から大人までみんなが食べられる、懐かしいお母さんが作ってくれたようなカツカレーだそうです」
「そうか、じゃあ絶対食べないといけないね」
「あ、でも、五大グルメには入っていないんですが、鶏ガラ、豚ガラ、海草、魚の干物、野菜などをブレンドして15時間煮込んだスープで作るラーメンは、亭主自慢の一品だそうです」
「へぇ~、それは何を食べるか迷っちゃうね」
俺も綾香ちゃんも申し訳なさと恥ずかしさを誤魔化すように話していたけど、丸大食堂はパドックの近くに有るから、直ぐに辿り着いてしまった。
「綾香さんは何が食べたいです?」
「太郎君と花子ちゃんは食べたいものあるの?」
「あまりお腹空いてないよ」
「花子もあまりお腹空いてないよ」
「じゃあさっき言っていた名物を3つ頼んで、4人で分けて食べようか?」
「はい、それで御願します」
「それでいいよ~」
「花子もいいよ~」
勝カレー:700円
中華ざる:500円
ラーメン:500円
「すみません、勝カレーと中華ざるとラーメンを1人前づつ下さい。それと取り皿4人分貰えますか?」
「はぁ~い、お待ちくださいね」
「はい、お願いします」
「勝也さん、水沢競馬場の見どころも調べてみたんですけど、今は季節外れですが、角川映画のロケ地としても使用されたほどの桜並木があるそうですよ」
「そうなんだ、今度は桜の季節に来たいですね」
「本当ですね」
水沢競馬場パドック:予想中
「うんとねぇ~あの子が1番元気~」
「花子もあの子が1番元気だと思う~」
よしよし、7番が頭だな
「今くらい小さな声で、次に元気な子を教えてくれるかな?」
「2番目はあの子~」
「花子もそう思う~」
よしよし、2番目は2番だな。
「よしよし、同じように小さい小さい声で3番目を教えてくれるかな」
「3番目はね~あの子だよ!」
「花子もあの子だと思うな~」
よし、3番目は3番だな、今度のレースこそ高配当ならいいんだけど。
「勝也さん、さっきポニーに乗った、ちびっ子ポニー乗り場の手前にあった神社ですけど、宝(トレジャー)神社と言って、奥州市内にある駒形神社の御祓いも受けた本格的な神社だそうです。だから馬券だけじゃなく、家内安全・商売繁盛・受験合格・恋愛成就にもご利益があると書いてあります」
「え~、でも神様も妖怪もいないよ」
「そうだよ、花子に見かけなかったよ」
「しぃ~黙って!」
「あの? 勝也さん?」
「いゃ~、子供は敏感だからさ、太郎君も花子ちゃんも霊感が強いんだよ」
「え? そうなんですか?!」
「うん、そうなんだよね」
「そんな事より、さっきはご飯急がせて悪かったね、気分悪くなっていない?」
「いえ、それは大丈夫ですから」
「おじさん、もう1度ポニー乗りたい!」
「花子も乗りたい!」
「そっか、でも1人1回なんだよ、だから今日は駄目なんだよ。明日行く競馬場でも乗れるようなら乗せてあげるからな」
「絶対だよ」
「花子も絶対だよ」
「絶対は無理だよ、競馬場にも都合が有るからね、代わりに新幹線と電車に乗せてあげるからね」
「明日はどこに行かれる心算なんですか?」
「さっき調べたんだけど、JRAは東京開催のようだから府中に行く心算なんだ」
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