第4話東京へ
水沢競馬場:第前のパドック
「勝也さん、さっきの話なんですが、私も東京について行っていいですか?」
「いいですけど、本気ですか?」
「はい」
「じゃあ悪いんですが、ここから新幹線で東京の府中まで行く行程と料金を調べて頂けますか?」
「はい任せて下さい、ありがとうございます」
「いえいえ、旅は道連れ世は情けと言いますからね」
さてどうしようか?
だが調子に乗って邪(よこしま)な考えを持つのはやばいよな?
そんな事より考えておくべきは、今後の資金決済方法だ。
今までは格安スーパーで買い物して自炊する生活だったから、ほとんどカードを使用する事はなかった。だけど今後の事を考えれば、地方競馬の配当金はネット銀行の口座に入るし、JRAの配当金は都銀の口座に入る。だけどカードの引き落とし口座はゆうちょ銀行になっている。
これだとカードの引き落としの為に、現金をゆうちょ銀行に入金しなければならない。ネットで振込みもやれるのだろうけど、今までやった事がないからちょっと不安だ。それならカードの引き落とし口座をネット銀行に変更する方が、地方競馬投票サイトと同じグループ企業だけに楽だろう。
俺はこの後、太郎君と花子ちゃんに勝ちそうな馬の情報を教えてもらいながら、ネットで色々な手続きを済ませることにした。10年以上前に買ったガラゲーを使っての手続き変更だから、それこそどれくらいの通信料や情報料がかかるか分からないけれど、出来るだけ早く済ませておきたかった。
綾香ちゃんは新幹線だけでなく、東京競馬場近くのホテル情報もいろいろ調べてくれた。御蔭で水沢競馬場から東京競馬場まで行くのに不安が無くなった。
結局どれくらい勝ったのか負けたのか分かったのは、水沢競馬場を出てタクシーで水沢江刺駅に辿り着いた時だった。
「すみません、大人2人と5歳児2人で東京の府中駅までおねがいします」
「はい、ですがJRですと新宿駅までとなります。新宿駅からは京王線をご利用ください」
「はい分かりました、ありがとうございます」
「それと指定席・グリーン席・グランクラスとありますが、どれになさいますか?」
「指定席で御願いします」
「5歳児の場合は自由席なら無料なのですが、指定席だと子供料金となるのです、それで宜しですか?」
「はい、それでお願いします」
「JRの基本料金基準」
大人……12歳以上(中学生以上)=大人運賃
小児……6歳〜12歳の小学生=半額
幼児……1歳〜6歳までの未就学児=無料
乳児……1歳未満=無料
俺はカードで4人分の決済したが、新幹線はやぶさを使って大宮まで行き、大宮から湘南新宿ラインを使って新宿まで行くのに4人で3万9180円使った。子供達の大宮から新宿までの料金は無料だった。
「水沢江刺駅から大宮駅」
大人1人:指定席料金:5680円
:運賃 :7020円
子供1人:指定席料金:2840円
:運賃 :3510円
「水沢江刺駅から新宿駅」
大人1人:指定席料金:5680円
:運賃 :7560円
「あの、勝也さん、料金を払わせてください」
「いや大丈夫だよ、今日は大勝ちできたから懐があったかいんだ」
「そんな、私が勝手でついて行かせてもらいますのに、交通費を出して頂くなんて出来ません」
「そんなことはないよ、綾香さんが競馬場で太郎君と花子ちゃんの面倒を見てくれたから、俺も余裕を持って馬券を買えたからこそ勝てたんだから」
「それくらいの事で出して頂くなんて出来ません」
「大丈夫だよ、それにもし競馬に負けるような事があったら、綾香さんにも自分の分を出してもらうから、それまでは交通費はもちろんホテル代も食事代も僕が払うよ」
「本当にそんなご迷惑はかけられません」
「だけどね綾香さん、この歳のおっさんが綾香さんのような若い女性にお金を出させるなんて恥なんだよ、僕に恥をかかせないでくれるかな?」
「それは・・・・・」
「御願いだよ、綾香さん!」
「・・・・・ありがとうございます」
綾香さんに言ったように、俺は水沢競馬場で大勝ちする事が出来た。第1レースの三連単で1万4890円取ったのも大きかったのだが、1番大きかったのは第8レースの三連単で16万0080円取れた事だった。御蔭で今日1日で、俺のネット銀行の口座には28万6250円ものお金が降り込まれることになった。1カ月後に交通費3万9180円が引き落とされても大丈夫だ。
それに第1レースは現金で買ったので、財布の中も2万4660円の現金が増えている。まあ1000万円の現金を持っているから、それくらいの金額が増えても対して感慨もないんだけど。
「それで綾香さん、府中周辺のホテルなんだけど?」
「はい、色々調べ直しているんですけど、4人一緒に泊まれる所が中々なくて」
「えぇぇぇぇ!」
「え?」
「4人一緒って、4人で同じ部屋ってこと?!」
「私と一緒じゃいやですか?」
「いやじゃない、いやじゃない、でもいいの?」
「はい、勝也さんさえ宜しければ」
「でも東京競馬場の近くに、4人で一緒に泊まれるところはないんだよね?」
「マンション形式の素泊まりならフォースルームがあるんですが」
「じゃあそこにしよう、食事はチェックインしてから食べに出ればいいさ」
「はい、では予約しておきますね」
「お姉ちゃんうれしそう」
「うん、お姉ちゃん本当にうれしそう」
「こら、太郎君も花子ちゃんも止めなさい!」
「いえ、いいんです」
「ちょっと変わった子供達なんで、気にしないでやって下さい」
「いえ、本当にいいんです。誰かと一緒にいてもずっと寂しかったのに、今朝から寂しくないんです」
「そうか、それならいいんだけど」
そうだな、やっぱりそうだよな、こんな親父が恋愛対象な訳ないし、自殺しようとするくらい精神的に追い込まれていたんだから、誰かと一緒にいたいだけだよな。
「勝也さん、予約する予定のホテルなんですが、中にカレー屋さんが有るんです。太郎君と花子ちゃんカレーは食べれるんでしょうか?」
「太郎君、花子ちゃん、カレーは食べた事ある?」
「かれーてなあに?」
「花子かえーて知らない」
「そうか、そうだよな、あの家でカレーは作らないよな、他にホテルに入ってる店はありませんか?」
「そうですね、ちょっと待ってくださいね。居酒屋、スポーツバー、アジア・エスニック料理と書いてる店が有ります。チャーハン、カレー、ピザ、パスタ、唐揚げ、焼きそば、そうめん、サラダなどもありますから、少々好き嫌いがあっても大丈夫だと思います」
「問題はスポーツバーて書いてるとこだよな、あまりうるさい所や行儀の悪い所にこの子達を連れて行きたくないんだよ」
「それはそうですね、マンション形式でミニキッチンが付いていますから、コンビニで何か買って来て食べてもいいんじゃないでしょうか?」
「そうだね、その方が楽かもしれないね」
「かれーて食べてみたい!」
「花子も! 花子も食べてみたい」
「そうか、2人もこう言っている事だし、カレーに決めようか」
「はい」
新幹線の中が、気まずい時間になったらどうしようと心配していたんだけれど、色々と調べて話す事で時間を潰す事が出来たので、全く気まずい思いをしないですんだ。いや、むしろ俺には心躍る愉しい時間だったし、綾香さんも愉しそうにしてくれていた。
京王線府中駅:
「お腹空いた~!」
「花子もお腹空いた~!」
「そうか、じゃあカレーは止めて、チェックインの前に何か食べてしまおうか?」
「そうですね、チェックインは23時までだそうですから、あと3時間は大丈夫です」
「太郎君と花子ちゃんは何か食べたいものあるかい?」
「魚が食べたい」
「花子もお魚が食べたい」
「魚か、焼き魚がいいの煮魚がいいの、それとも寿司とかの方がいいのかな?」
「すしが食べたい!」
「花子も花子も!」
「綾香さん、近くに寿司屋ってありますか?」
「ちょっと待ってください、調べさせてもらいます」
「ごめん、助かります」
「いえいえ、あ、府中駅の南口を出た所に回転寿司屋さんが有ります」
「じゃあそこに行きましょう。太郎君、花子ちゃん、綾香お姉ちゃんと手を繋いで迷子にならないようにするんだよ」
「は~い」
「花子もは~い」
回転寿司:カウンター
「さあ! 好きな物をどんどん食べよう」
「食べる~」
「花子も食べる~」
「はい、いただきます」
「これ取って食べていいの?」
「花子もとって食べる~」
「食べてから次の皿をとるんだよ、食べ終わる前に次の皿をとっちゃ駄目だよ」
「わかった~」
「花子も分かった~」
フェアーで100円の皿もあるけど、他は全部150円に統一されているから分かり易いな。
「旦那さん、好きなのを注文して下さったら握らせていただきますよ」
「そうかい、じゃあそうさせてもらおうか」
閉店1時間前の所為か、下手にレーンに流して無駄にするよりも、注文受けた分を握る方がいいと判断したのかな?
「真鯛下さい」
「私も御願します」
「まだい~」
「花子もまだい~」
「ご家族でしたら色々な物が食べれるように、2皿4貫で握らせて頂きましょうか?」
「ありがとうございます、そうしてやってください。3人とも苦手な物なら残すといいよ、俺が食べるからね」
「はい」
「わかった~」
「花子もわかった~」
うん、表面が軽く炙ってあってむっちりした食感だ、悪くないな。
「烏賊下さい」
「小振りですが、ゲソもついた1杯使ってますので、1皿1貫になりますが宜しいですか?」
「はい、それでお願いします」
これは意外と大きくて口の中が満杯になるけど、細かく包丁が入れてあるので食べやすいし美味しいな。
「美味しいですね」
「そうですね」
「すき~」
「花子もすき~」
「つぶ貝、赤貝、いわし、しらうおをお願いします」
「はい、赤貝は1皿1貫になりますが?」
「大丈夫です」
太郎君も花子ちゃんもお腹が空いてるようで、間が空くのが嫌みたいだから、矢継ぎ早に注文したほうがいいだろう。つぶ貝と赤貝は臭みがなくて結構美味しい、いわしは小骨の処理が悪くて少し残っているけど美味いのは美味い。太郎君も花子ちゃんも、小骨が喉に刺さらなかったようなので一安心だ。白魚は軍艦なんだな、シャキッとした食感でまずまず美味しい。
「金目鯛、かつお、甘エビ、えんがわをお願いします」」
「はい、金目鯛は1皿1貫になりますし、ヒラメでは無くカレイなんですが?」
「大丈夫です」
3人ともだいぶ空腹が落ちついたようだな、後は1つづつの注文でも大丈夫かな?
金目鯛は悪くはないけど脂の乗りがもう1つだな。
かつおも戻り鰹の一本釣りと一緒にしちゃ悪いな、こんなものなんだろうな。
甘エビは1貫で1匹乗せだけど、結構大きめで食べ応えもあり甘くて美味しいな。
エンガワはコリコリした食感と、しっかりとした脂の乗りで今日食べた中では1番美味しい。
「大トロびんちょうお願いします」
「1皿1貫になりますが?」
「お願いします」
150円のびんちょうだから仕方がないけど、大トロを名乗りのは無理があるな。
「炙りサーモン、サーモンマヨネーズ、アボカドサーモンをお願いします」
「はい」
サーモンを食べ比べてみよう。
3人とも大人しく食べてるけど、思った以上に食べるな。
サーモンマヨネーズは、サーモンの味が少し薄い気がするけど、普通に美味しい。
炙りサーモンは、炙った分サーモンの風味が強くなっているけど、それでもあっさりと食べれて美味しな。
アボガドサーモンは軍艦か、うん、これは鉄板の美味さだな。
板さんもネタの強弱が分かっていて、注文順ではない出し方したのかな?
「炙りいわし、豚カルビ、黒毛和牛、うなぎ、厚焼き玉子」
「黒毛和牛、うなぎ、厚焼き玉子は1皿1貫になりますし、厚焼き玉子は寿司ではなく玉子だけになります」
「それでお願いします」
「はい」
炙りいわしも少し小骨が残っているけど、さっきのと甲乙つけ難いくらい美味しい。
豚カルビはやわらかくて普通に美味しかったです
黒毛和牛はジューシーで美味しいけど、うん、寿司屋で無理に肉を食べる必要もないね。
うなぎは当たりだ、脂がのっていて結構美味しい。
厚焼き玉子も当たりだ、少し甘いけどあっさりしてるし、醤油をつけて食べるとちょうどいい感じに美味しい。まあ元々甘々の卵焼きも好きなんだけど、この味は俺好みで嬉しい。
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