第131話 生きるは死・死は生きる
すると、涙を流す波が、膝をついて後ろを振り返った。
血の雨が、降り注いだせいか、まるで波が人を殺したようにも見える。
里奈は波に問いかけた。
「何かあったの?…章と明日香と杏子は?」
波は絶望した表情を述べ、涙を流し答えた。
「んだ…みんな…んだ」
里奈は聞き取れず、もう一度問う。
「え?…ごめん、この雨のせいで聞こえない」
今にも消えそうな声で言った。
「死んだ…みんな死んじゃったよ、里奈ぁ」
里奈の体にしがみ付きら涙が止まらなかった。
里奈は少し引き離し問う。
「何で死んだの?何があったの?」
波は無言でちらっと、屋上の隅を見た。
里奈は波の見た意味を理解出来た。
隅まで行き、真下を見た。
すると、血の雨が降っていても、明日香と杏子と章の死んだ遺体から、流れた血だと直ぐに分かった。
はるか上空から見ても、死んでいるのが一目瞭然だった。
里奈は気分が悪くなり、口から汚物を吐いた。
里奈は波にふらふらな体で近寄った。
「何で死んだの?」
波は目には、ほぼ生気はなく、壊れた人形のように言った。
「みんな、怖さから叫び出して、私も聞いていたら、おかしくなりそうで、私は目をつぶり耳を塞いだら、物凄い音がして目を開けたら、誰もいなくて、下を見たらもう死んでいた。」
里奈は波から目を逸らした。
波の姿が見ていられない。
波を抱き寄せた。
「波だけでも生きてて良かった。」
里奈の瞳は、少しばかり濡れていた。
波は突き放すように言った。
「でも、みんな最後は殺されちゃうよ!」
「まだ、分からないでしょ?」
「じゃあ、どうやったら助かるの?」
波はしがみ付くように言った。
「それは…」
「ねぇ?ないでしょ?なら里奈も一緒に死のう?」
里奈は波の手を振り解いた。
「嫌…私はもうやだよ…人が死ぬのは」
「だからだよ…今死ねば、もう苦しまなくて良いんだよ?…里奈が死なないなら、私だけでも死ぬ」
波は飛び降りようとするが、里奈が手を掴み抑えた。
すると、下には霊子が、明日香達の死体を運んでいた。
「どこに連れて行くの!遺体なんか」
波も抵抗して、里奈は落ちそうになり、波を突き飛ばした。
すると波が視界から消えた。
里奈の脳裏に、前世と思わしき記憶がフラッシュバックした。
急いで下を見ると、波が潰れた死体になっていた。
「あ…あ…あぁぁぁぁぁぁぁ…わ…私、人を殺した…多分、今の記憶、霊子を殺したの、私なんだ。」
悲痛な叫びが、木霊する。
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