第132話 生きるは死・死は生きる

下から物音がした。


波を連れて行く、霊子がいた。


霊子は里奈に気づき、上を見上げた。


霊子と目があった。


里奈に言った。


「待ってて、クラスメートは里奈だけだから」


そう言い残し、霊子は死体を運んだ。


里奈は霊子を追いかけた。


急いで玄関に行ったが、霊子はいない。


里奈は考えた、遺体を安置する場所を。


開かずの間しかない。


里奈は開かずの間に向かった。


すると、霊子は開かずの間の前にいた。


霊子は、小馬鹿にした口調で言った。


「いらっしゃい、里奈」


里奈は遺体の在り処を聞いた。


「みんなを、どこにやったの?」


首を捻らせ、答える気はさらさらない。


「私の胃の中?…アハハハハハ…そんなのどうでも良いでしょ?里奈」


「ねぇ、霊子1つだけ聞かせて」


「何でしょう?」


里奈は重い口を開き、勇気を出して言った。


「私…前世で霊子を殺したんでしょ?」


「殺されましたよ…吉沢先生やみんなに」


里奈は更に問い詰めた。


「どうゆう意味?」


「貴女が思い出したのは、私を突き飛ばした所だけ?」


「うん。」


「私は、あの時は生きていました。


奇跡的に…だけど、あの時、貴女をけしかけたのは春香…春香をそそのかしたのは、吉沢先生」


里奈は罪悪感を覚えた。


私が霊子を…。


「ごめんね…霊子…ごめん…そりゃ、殺したいよね…でも、今からでも間に合うなら、もう戻ろう…霊子はもう、苦しまなくて良いから、私が受け止めるから」


霊子は少しずつ近寄った。


「私を受け入れるの?」


里奈は霊子に涙を浮かべ聞いた。


「霊子こそ、私を許してくれるの?」


霊子は笑みを浮かべた。


「うん。だって、ここはあの世だから…罪を洗い流す、あの世とこの世の狭間だから、天国と地獄の狭間だから…安心して消滅して、それで…許すから…永遠に」


ナイフを取り出し喉元に刺した。


里奈は何かを話そうとしているが、口をパクパクさせているだけ。


霊子はナイフをそのまま下に振り下ろし、体を引き裂いた。


「これで許すよ…だって、魂は死んだから…アハハハハハ…ヒァハハハハハハ」


里奈の死体を開かずの間に運んだ。


霊子は外を見ると雨は止み、代わりに赤い雪が降った。


「これで、クラスメートは全員死んだ…あとは最後だね、先生!」


霊子は歩き出し、階段を降りて1階まで来た。


霊子は、躊躇わずに理科室に来た。


教卓に、まるでこれから、授業でもするかのように立っていた。


吉沢先生は霊子に笑みを浮かべた。

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