第80話 あの日の始まり

「ふふふ、痛いよね…クルシイよね?私も苦しい…でも…死は魂の安らぎ…里奈は言ってマシタ…友達は、同じ苦しみも共有するッテ…ダ…カ…ラ…私と死を快楽に変えて死んで」


人の死は体が冷たくなり、心臓の鼓動もしない。


いつしか霊子には、死は同じ場所に帰る、死ねば一緒にいれると思ってしまった。


憎しみと愛が霊子にはあった。


この2つの感情を満たす行為が、クラスを殺すという選択に走らせた。


霊子は笑いながら、首元にナイフを振り下ろした。


切りつけられた相手は、もがく姿さえなく、ぴくりとも動かなくなった。


あぁ、これが死だぁ。


また、1人帰る。


友達。


達也、みんなも直ぐに行くから苦しまないで。


寂しくないよ。


ちょっとの間だから。


「死んだ。まだ2回しか切ってないのに…そんなに友達になりたいですか?」


死んだ達也の体を揺さぶり、まるで寝てしまった友達を起こすようだった。


「何で、返事…しないの?」


霊子は怒りがこみ上げた。


「私を無視するの?」


霊子は死体が返事をしない理由を考えた。


何かを閃いたように、ナイフを握った手を左手の平たい手にぽんと置いた。


「そっかぁ、まだ私程苦しんでないからかぁ…照れ屋さんですね!これで良いですか?」


霊子は嬉しかった。


苦しみ。


この感情を霊子に満たす程、与えて欲しいと感じたからだ。


霊子は達也の頭部の頭上から、ナイフをメスを入れるように切った。


体はぱっくりと開き中に、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、胃、腸、肺、などがあり霊子は心臓を掴んだ。


心臓を、達也本人に話すように話した。


「返事しろ、あー…何で?ん!これ何?」


腸をもぎ取り、頭上で広げ笑った。


心臓をその場に投げた。


まるで、ゴミを投げるように。


「なっがーい…何コレ虫?…新幹線見たい。」


伸ばした陽を、車を走らせる無邪気な子供みたいに床に擦りつけた。


擦らせた陽についた血が、広がり達也の体から水を掬うように血を取り地面に垂らした。


「こっちの方が滑る。」


ぬちゃぬちゃと、耳を塞ぎたくなるような音がする。


霊子は暫くして飽きたのか、再び心臓を手に取り口にした。


「う~ん。ハンバーグじゃない味がする…あ!ケチャップが足りないんだ。」


死んだ体に、心臓をつけた。


再び口にすると血は、ぽたぽたと垂れる。


「うん。美味しー、瑠璃にも食べさそう、里奈は肉嫌いだからなぁ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る