第81話 あの日の始まり

霊子は立ち上がり、教室を出ようと戸に手をかける直前に、ピタリと止まった。


後方に振り返り里見、和樹、竜也を見つめるも、3人の死体を襟首を掴み、乱暴に開かずの間に持って行った。


この行動は、今まで意識のない方の霊子がして来た事。


今は意識もはっきりした霊子。


けれど、死体を開かずの間に運ぶのは、霊子の中の潜在意識を呼び戻されたものなのか。


はたまた、それ程の怨みが自然と行動を抑制しているのか。


1つ確かなのは、霊子はどちらでも、必ず殺しを行うと、開かずの間に持って行く事だけ。


意識が融合し、互いに溶け合い混ざり合う霊子は、前より確実に禍々しさも、殺人もエスカレートしつつある。


右手に食いかけの心臓を握り締め、瑠璃の元へ向かった。


瑠璃の、学祭準備は教室。


教室を見渡しても瑠璃の姿はない。


何処を探しても見つからない。


最後に残ったのが、京子が死んだトイレ。


霊子はトイレの前に立つと、口元が緩む。


「いた。る~り…ピートントンピートントン」


瑠璃は京子が死んだであろう場所を、切なそうに見ていた。


霊子はゆっくりと扉の音を立て入って行く、返り血を浴びた殺人少女の姿で。


「る~り!」


瑠璃は振り返り目を見開いた。


「あ、霊…子?何!血?怪我したの?」


霊子に駆け寄り、体を支えようとした。


霊子は口が釣り上がる程、微笑み瑠璃に言った。


「瑠璃は優しいね、ピートントン」


呆れた顔になり、面倒くさそうに言った。


「何?これ霊子の血じゃなくてインクかペンキ?脅かさないでよ。」


心臓を瑠璃に渡した。


顔から血の気が引いていき、青ざめていく。


「え!何?周りに付いているの血…なの?…こ…こ…これ、し…心臓?…な…何で?まさか京子を殺したの…霊子?」


霊子は笑顔だが、明らかに人に愛情を込めた、笑顔ではなく獲物を狩り、殺意が剥き出しの笑顔。


「違うよ。京子は私じゃない…それとね、そろそろお腹が減ったよ!瑠璃」


暴れ出した瑠璃を頭から押し付けると、共に持っていた心臓が床に落ちた。


叫ぶように大声で怒鳴った。


「京子はって、他のいない人は霊子なの?」


「私だけど、私じゃない。」


「どう言う意味?」


「貴方達が呼んだ死神だよ。


でも、今は瑠璃が知ってる霊子だよ、だから食べて欲しい、私の料理」


瑠璃の顔の前に心臓が落ちている。


「これ、里奈のじゃないよね?」


首を傾け言った。


「竜也のです。」

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