第68話 復讐の冷血

一瞬場が膠着して、2人は沈黙の間、互いに睨むように鋭い瞳で、目を合わせた。


「さっさと、死ね。」


殺意の言葉と共に、再びナイフを心臓に向かって腕を勢い良く伸ばす。


京子はナイフから目が離れず、自分の体に突き刺さるのを、只々目視していた。


「う、っあ…やだ…痛い…助けて」


助けを縋るように手を伸ばすも、人見は口元の両端は釣り上がる程の、笑みを浮かべていた。


その笑みは、京子を絶望の淵に叩き落とし、勝ち誇るようにナイフをそっと抜いた。


抜くと同時に、雨の如く血の雨が吹き出し、体に大量の血を浴びた。


京子は人見の手が離れると、同時に倒れた。


トイレの壁や個室のドア、鏡まで血しぶきが飛んでいる。


倒れた京子を見下ろし、右横にある鏡に血を浴びた自分の姿を見て、笑っていた。


その笑みは、邪魔者を排除した事の達成感と、霊子を独り占め出来る独占欲。


「ふふ、あはははは…次は里奈辺りかな?」


立ち去ろうとした中、京子が呻き声を上げた。


「う…うあ………ヴヴヴ」


声の方に急いで振り返り、疾走しながら高く飛び、着地と同時にナイフを下に向け、京子の頭部に突き刺した。


「うあ……………」


突き刺したナイフを抜き、頭を鷲掴み、死を確認した。


京子は目は、死んだ魚より生気がない。


人見は、叩きつけるように頭を投げつけた。


扉を開けトイレから出る。


血まみれのまま、向かう先は霊子の元。


霊子の叫び声が、体育館に響く。


この痛みは、記憶が戻る戦慄。


頭の中に前回の続きと思われる、映像が流れる。


京子と波と思わしき人物に、霊子は責め立てられている。


京子と思わしき人物は言った。


「霊子、あんた人の彼氏に手を出すとか最低!」


波と思わしき人物も、京子に続けて言った。


「霊子は、友達を傷つける人ではないと思ってた。」


霊子と思わしき人物は、必死に否定していた。


「私、里奈の彼氏取ってないよ!あいつが私に声をかけて来ただけで」


「人の彼氏のせいにするとか、自分が可愛いからって図に乗るなよ!」


京子の一言に、霊子は話すも、取り入っても貰えない。


「私は違う、あいつは色んな奴に手を出しているんだよ。・・・私以外にも……」


「言い訳は見苦しいよ。」


波の突き放す一言に、膝を尽き大粒の涙が頬を伝った。

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