第67話 復讐の冷血

「ふふふ、霊子様、今貴方にこの者の血を捧げます。」


訳の分からない言葉の中、霊子の言葉にだけ京子は反応した。


「何で霊子?ねぇ、何で霊子なの?」


人見は霊子で壊れている。


最早、言葉など通じない。


それでも京子は、人見に問いただした。


恐怖を抑えて。


天を見上げながら、京子の言葉にゆっくりと扉を開けるように、京子を殺意に満ちた眼光で見下ろしている。


言葉に所々間があって、悍ましい気持ちが一層こみ上げた。


「私は………霊子様に………救われた………」


京子は何の事か分からない。


少なくとも、この怨念の塊と化した人見を、抑えれる人は霊子しかいない。


けれど、霊子に辿りつける事は、不可能に近い。


今、人見が私を襲わず片言でも会話が出来るのは、今私が逃げ切れない事を理解しているからだ。


もしここから少しでも出ようとすれば、真っ先にナイフを振り下ろすだろう。


京子には少しでも時間稼ぎをして、誰かが入って来れば助かるかもしれない。


しかも、今日から学園祭準備。


誰かが来る可能性は、十分ある。


京子は焦りながらも、冷静を保てた。


もしかしたら恐怖が恐怖を塗り潰したからかもしれない。


「大丈夫だよ。霊子は人見が1番仲が良いから」


壊れたレコードのような発音で、話し続ける。


「1人…の……私…に…声を…かけて…く…れ…た…霊子…様…だけ…一緒に…いて…から理枝も…彩も…消えた…きっと霊子様に違いない、霊子様は神だ、お前では相応しくない、私だけが隣を許される。」


言葉の間の感覚が多くなり、話が終盤になると、まるで歌のサビにでも入ったかのように、興奮し早口で話す。


その言葉1つ1つには、負の感情が詰まっていた。


覆いかぶさるように京子に迫った。


「やめて、許して、おねが………」


闇の中、光輝くナイフを京子の顔を目掛け振り下ろされた。


咄嗟に両手が、顔を庇うように塞いだ。


左腕から大量の血が、地面にぽたぽたと落ちる。


この血が落ちなくなかった時、どちらの死を意味する。

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