第66話 復讐の冷血
自分がわかっている事を話す霊子。
「実は理枝の時、追っかけられ、腕を掴まれて、必死に抵抗したら、理枝が階段から落ちてしまって、そっから何も覚えてません。」
夏希は驚きながらも、質問を続けた。
「え!じゃあ彩は?その後理枝はどうしたの?」
下を俯向きながら答える霊子は、どこか寂しさを感じさせた。
「わかりません。」
夏希は恐怖より、理枝達の事が気がかりで、責めるように怒号を浴びせた。
「わかりませんじゃなくて、何で隠すんだよ?まさか理枝死んだの?」
ズキズキと頭に割れそうな程、痛みが走るも、脳裏に聞こえるのは、人の死を誘う鎮魂歌。
ピートントンピートントンピートントンピートントン。
頭部を両手で塞ぐように抑え、苦しむ霊子。
「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。」
何が起こっているのか、分からず慌てている。
「な、何、何なの?急に」
同時刻1階女子トイレ。
京子は用を足し、個室から出ると人見が立っていた。
京子にとって元々人見は苦手だった。
話かけても大抵は返事がない。
私の事が、嫌いなんだと認識していた。
でも今回は違う、口さえ利かない人見が京子を目的に目の前に来ている。
夥しい程の怨念が、人見の表情から見てとれた。
思わず聞いてしまった。
「私によう?」
人見は目を大きく見開いた。
「私にようか・・・だって?霊子様に近づいた罪深き罪人が、殺されなきゃ分からないの?」
京子は逃げる事を考えたが、後ろは壁窓はあり、とても人が通れる大きさではなかった。
出口は人見の後ろの戸しかない。
人見をなだめようとするも、怒り狂った言葉しか返って来なかった。
「そうだよね。人見は霊子と仲良しだから、私がいたら邪魔だよね!次から気をつけるから許して」
手を合わせ頼みこむも、鋭い目つきが更に増す。
「霊子?何呼び捨ててるの?私の神に」
人見はポケットの中を弄り、ナイフを取り出した。
向けられた刃に、後退りする京子。
「やめて、お願いやめてー」
泣き叫ぶ京子に、不気味な笑顔を向ける人見。
人見は優越感と、高揚感、更に支配欲に満ちていた。
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