第62話 復讐の冷血

やはり、今日も記憶がない。


どうやって、帰ったのか。


どうやって、来たのか。


学校の玄関に入ると、里奈がいた。


いつもの里奈は、早く学校にいる。


けど、今日に限って、いつも時間ギリギリの霊子と鉢合わせた。


「今日は遅いんですね。」


里奈は苦笑いしながら答える。


「今日から学祭の準備期間でしょ、もう楽しみで!」


苦笑いから笑顔になる程、楽しみな里奈。


「同じ班で、よかったです。」


「そう、それ、同じ班なのが1番嬉しい。」


2人は教室まで談笑しながら歩いていると、教室前に人見が霊子を待っていた。


その姿は、神に仕える天使のようだ。


人見は霊子を見るなり、即座に近寄り、挨拶を交わす。


「霊子様、おはようございます。」


「おはようございます。」


里奈は1人、機嫌が良い。


「おはよう。」


霊子の席に、いつものメンバーが集まった。


そこに人見が加わる。


波はみんなと1人離れた事に、納得がいかない。


「なんで、私だけ1人なの?」


瑠璃は慰めるように自分の心情を語る。


「私も1人だよ。」


「まだ、友希と正木がいるじゃん。」


塞ぎこむ波に瑠璃は、次の言葉が思いつかなかった。


友希が軽い気持ちで言った。


「誰かと、交換して貰えば良いんじゃね?」


「先生に聞いたら、駄目って言われた。」


前方のドアの窓から先生の姿が見えた。


「あ、先生が来た。」


集まっていた瑠璃達は、席に急いで戻った。


吉沢先生は、ホームルームで学園祭について話した。


「今日から学祭準備が始まるが、残って良いのは9時まで、だからそれ以上は許可出来ないからな」


正木が質問をした。


「先生、各班の作業場所はどこですか?」


笑顔で答えるが、どこか笑顔で誤魔化そうとしていた。


「そうだ、言い忘れてた!良く言ってくれた。」


微妙な表情の正木。


「忘れないで下さいよ。」

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