第44話 1人目

最初に見ていた里奈と瑠璃以外は、作られた写真じゃないかと疑うほど驚いていて、答えの知らない者同士確認し合うように、隣にいる者に問いかけるも、誰もが質問で返って来た。


この写真は本物だと理解するまで、時間はそうかからなかった。


正木はふと昼のやり取りを思い出し、里奈に問いかけた。


「そういえば、昼間言ってた霊子ちゃんの記憶喪失が、この写真と何の関係があるんだ?」


里奈は、聞かれる事は分かっていた。


正確に伝えるために写真を手に取り、正木に見せながら話を進めた。


写真の1人の人物に指を指した。


それは、霊子だった。


「ここ見て!」


顔を近づけてみる正木。


「霊子ちゃんにそっくりだな!」


みなにもこの状況を伝える為には、正木のように言葉通り動いてくれるのが、1番やりやすかった。


「そして裏に、1800年学園祭と書かれている。」


「本当だ。」


「つまり、これは今から200年前の出来事、しかも霊子に似た人物もいるし、私達にそっくりで先生まで、これは偶然では片付かない。」


「まぁ、偶然ではないだろうな。」


「今回霊子は偶々転校して来た。


段々、この写真の状況に近づいて来ている、そして・・・」


「そして?」


哀しく消えてしまいそうな、か細い声で言い放った。


「霊子は記憶がない。


霊子の転校が、初めから決まっていた事かもしれない。」


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