第42話 1人目

暗くぼんやりと、微かに物の位置がわかる程、にしか見えない。


電気をつけようと、白い壁を手当たり次第に触るも、見つからない。


仕方なく僅かに見える部分を頼りに、写真を探した。


「暗くて、ほぼ見えないな。」


「先生はいないよな?」


気配を探るように見渡すも、何処も暗く人の気配は感じられない。


「いないな、こんな事なら、懐中電灯でも持ってこればよかった。」


「こんなんで写真見つかるのかよ!」


壁を頼りに、右の方へゆっくりと一歩ずつ進むと、右端の机に物が置かれている。


「この机が吉沢先生のだ。」


声のする方へ歩き出すも、あまり見えず机の角にぶつかった。


ぶつかった痛みで一瞬、今している事を忘れ、声を上げてしまう。


「いてぇ!」


「おい。大きい声を出すな!気づかれたら終わりだぞ。」


正木の声が聞こえるもの、姿は見えない。


今にも泣き出し、震えた声を上げる。


「わ、悪りぃ、何も見えないから」


まさぐりながら話していると、目当ての物と思われる形の感触が手に伝わる。


「気をつけ・・・あ!あったぞ」


「なら、さっさと戻ろうぜ!」


来た道の形は覚えている。


帰りはスムーズに職員室を出る事が出来た。


「おぉ。今行く!」


段々と声の音が近くなり、目の前に辿りついた。


「出れた!生きた心地がしねぇ。」


音楽室にいる里奈達も心配だった正木は、直ぐに友希に話し、右手に写真を持って走って向かった。


「里奈達が心配だ。直ぐ戻るぞ」


安堵しながら、恐怖から、先生から、闇から、逃げるように走っていった。


向かう先もまた、地獄の付近だと知らないまま。







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