第41話 1人目

いざ入る間際になると、恐怖が押し寄せ、微かな物音さえも恐ろしくなる。


友希は恐怖心から、自分の意見より正木に縋り、心を預けるかのように、はっきりとしない言葉を並べた。


「じゃあ、は、入るか?」


正木は父親の居ない生活で、母や3つ下の弟の3人家族。


いつも誰かを守る立場だった為、友達でも自然と体が動く性格。


普段はおちゃらけているが、友達が困っているのを放って置けない。


友希の様子から、自分1人で行こうと決めた。


「友希、俺1人で行くから、里奈達の所へ戻れ!」


怯えている事を気遣ってくれた事は素直に嬉しい。


けれど、正木に全てを任せるのは、何より気がひける。


それどころか、女子達にああ言った手前、一緒に行くしかない。


それに1人で戻るより、正木といた方が怖くなかった。


意思とは異なる言葉ではあったが、1番の安全な選択をしたのだ。


「俺も行く。折角ここまで来たんだ!って言ってもちょっと歩いただけだけど」


正木は1人で行く覚悟だったが、友希が一緒なのはやはり心強い。


「じゃあ、入るぞ。」


「おう。」


夜中のトイレを開けたような音をさせながら、入っていく。


正木が先に入っていくが、友希は前に正木がいる分、前方へは気を張らず戸を閉めるまで暗く長い廊下を見ながら、入っていく。

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