第26話 1人目

霊子を心配し、視線を変えない里奈。


「歩ける?」


「はい。皆さん待ってますね、すみません、私のせいで!」


霊子の左側に、瑠璃が支える様に手を掴む。


「困った時は、お互い様でしょ?」


霊子はその言葉に笑みで返した。


返事をしなかったのは、記憶に不安があったからだろうか?


それとも・・・


体育の授業も何ごとも無く終わり、昨日と同じ様な日常で昼休みを迎えた。


里奈と瑠璃は用事があるからと、直ぐに出て行った。


京子と波と霊子の3人になった。


始めに話を切り出したわのは京子だ。


「ねぇ、霊子。」


「はい。どうしました?」


僅かな沈黙に、波は京子の横で祈る様に見ていた。


「昨日の音楽室でピアノを弾いた曲だけど、その、悲しい感じの曲だよね?霊子が作った曲?」


「覚えていないのに弾けました。


多分、体が覚えてたんでしょうね。


私が作った曲だと思います。


確かに悲しい曲ですね。」


こんな質問に、笑顔で答えてくれる霊子は痛々しく見えた。


「覚えてはいないんだ。」


「そうですね。


前の学校でも浮いてたみたいですし、それで作った曲かもしれないです。」


話を聞いて同情心を憶えた。


波も同様の心だった。


「今は心配いらないよ。私達がいるからね。」


京子は、続いて言い放った。


「だね。」


記憶の話で昨日の鳴り響くように、頭が割れる様を繰り返して、体全体に染み渡る音を思い出し、俯きになる霊子。


京子は自分の聞いた事で、霊子に過度な負担を強いたと思い、何度も謝った。




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