第20話 1人目

里奈の言葉で自分の考えに、変化しつつあった。


「まー、確かにそうなんだけどさ、内らだけじゃ助けになるのかな?」


机に手を叩きつけた。


怒り気味の様子だ。


「私達が、諦めてどうするの?」



「里奈とは小さい頃から一緒だから、弱音を吐いちゃった。」


誤魔化すつもりで、笑顔を向けた。


乗り切るつもりで作り笑いを作った。


呆れたように、息を大きく吐いた。


「まーた、作り笑顔になってるよ?私の前にいる時は辞めい!」


手を指先まで真っ直ぐ伸ばし、瑠璃の頭にポンと置くかのように振り下ろした。


笑いを誘うように、冗談交じりに言った。


2人は、物心ついた頃からの友達だった。


最初の出会いはある意味最悪で、里奈は勉強や文化系があまり不得意に対し、瑠璃は勉学は学年で1位になる程だが、運動はからっきしで逆に里奈は運動は男子より出来た。


だからいつも喧嘩ばかりを繰り返し、次第に気がつけば親友という名の、かけがえのない者になっていた。


だから時々、お互いの気持ちを口に出さなくても、分かる事があるほどだ。


特に里奈は友達は多い方だけど、自分から声をかけるのは瑠璃ぐらいだった。


里奈から声をかけるのは多分、瑠璃以外初めてのことだった。


何が声をかけさせたのか、事実を追求するように霊子の様子を伺った。


里奈との会話を見て、直ぐにわかった。


自分がどれだけ辛く哀しくても、他人に悟られないように笑顔で毎日を乗り切る性格で、里奈と同じタイプだった。


里奈にとって初めて、自分と似た志を持った人間だった。


今まで生きて来てそれは、自分を苦しませるだけで何の救いにはならなかった。


いっそう京子みたいに、何でも口に出来る性格なら、どれだけ楽だっただろう。


それでも口に出来なかったのは、里奈の周りには瑠璃以外、誰も必要としてくれなく感じた。


特別誰かに、虐められた訳でもない。


父の裏切りは、他人もこうなんだろうと思わされてしまった。


何より悲しんでいる母に、自分まで悲観に暮れたら捨てられるかと思った。


だからいつも誰とでも距離を置き、人と深く関わらず笑顔でいれば、良いと自然と心得た。












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