第13話 1人目

理科室から出て来た霊子達は、教室に戻るまで、一言も会話がなかった。


決して、中が悪くなった訳ではない。


ただ友を思い、其々何が出来るのか?


心の中で、試行錯誤していただけだった。


授業が始まっても悩み、何かを考えていた。


友の心の痛みをまるで自分の様に、苦しむ里奈達の気持ちは、最早家族に近い友情だった。


昔の人は友達の為に、命を落とした人も多かった。


その苦しみの感情こそ、本当の友達の証だ。


上辺だけでは、こんな気持ちは抱かないだろう。


友とは、言葉だけでは何とも軽いものだ。


人とは文字通り、支え合って初めて歩める。


彼女らは支え合い、最後まで友として進めるかるのか。


そして、放課後になってすぐに、瑠璃達が霊子の席に集まった。


元々隣の席の里奈は、なにかと授業で貸したりしてた為、席は寄り添っていた。


男子の半分は霊子に気があったが、他の女子達がいつも周りにいる為、話す機会がなかった。


それでも、諦めきれずいつチャンスが来るかとまじまじと見ている。


何故、自分を見ているのかわからなかったけど、目があった時は笑顔で手を振ってくれている事に、悪い気はしなかった。


霊子も振り帰ると、顔全体が緩んでいる。


正に、情けない男と言う感じだ。


その姿を見ていた里奈は、男子のいやらしい目線を霊子に浴びせたくなかった。


手を掴み、半ば強引に廊下に連れ出した。


後に続いて、瑠璃達も後を追った。


「どうしたの?里奈!」何が起きたか不可思議に思った。


少し顔を強張らせているが、それは男子に向けられた感情だ。


「霊子に、1番大事な事を言うの忘れてた。」


右手で顔半分を押さえながら、自分の失態と言わんばかりに言った。


大事な事と言われた霊子は、背筋を伸ばし両手を前に重ね、足を揃え、目を見ながら、まるでこれから先生からの話を聞くかのような身構えでいた。


「男子は、みんな霊子に気があるんだよ。


男ってのはね、好きな女子に優しくして自分の評価を上げるの。


だから、気をつけた方が良いよ。


霊子は凄く美人なんだから、内の男子じゃ勿体ないよ。」


「悪い人達じゃなさそうだよ。


いつも笑って手を振ってくれるし。」


笑みを浮かべるその顔は、眩しいくらいの無邪気な物だった。


里奈の父親は、不倫して女を作って出て行ったっきり返って来ない。


父で、いつも母の苦労を見てきた。


父が母の綺麗さに、一目惚れして結婚した。


手に入るとすぐに飽きるタイプの男で、結婚して間もなく不倫。


里奈が小学生の頃に、離婚した。

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