第5話 1人目
少しバツが悪そうなかんじで「すまんすまん。お前は、いつもからかいやすからついな。」
吉沢先生は何かと昔から、男子生徒と女子生徒への接し方には差があった。
それは、女の子には優しくと両親に言われ、女性に優しく接している男の子も良くいるが、そう言う意味では決してない。
どちらかと言うと、女好きと言った方が近い。
だからと言って、男子生徒に冷たい訳でもない。
だからか、クラスみんなはなんとなく、雰囲気や空気感で何処と無く感じていたが、誰もそれを口にしない。
中には、生徒に手を出し生徒と付き合っていると噂があった。
生徒と付き合う噂は、真偽はわからないが、噂がある先生は、評判が悪い。
生徒達も、距離を置いている。
自分の噂が良くない事を、本人も気づいているためか生徒には基本的に明るく喋る 。
開いている廊下側の、ドアに向かって呼びかけた。
「入って、いいぞー。」
霊子はひたひたと足音が、微かにしか聞こえない程のリズムで、ゆっくりと入って黒板前にクラス全員に顔が見えるように立った。
教室にいた9割の、生徒は霊子の美貌に見惚れていたが、1割の女性生徒は、霊子を睨みつけていた。
霊子は、その生徒達に気づき少し恐ろしくなったが、周りの生徒は自分がこのクラスに転校してきた事を歓迎してくれた事に、嬉しさと安心した気持ちを抱いていた。
「じゃあ、黒板に名前を書いて自己紹介してくれ。」
チョウクを渡され、右手で受け取り黒板に、カッカッっと音を、立てて書き始めた。
クラスを、見渡しながら口を開いた。
「死死森霊子です。宜しくお願いします。」
霊子は、挨拶の際に頭を下げて言った。
顔を上げると、廊下側の1番後ろの席に、黒髪で髪の長さは頬ぐらい。
毛先がくりんと丸くなっていて、身長は150㎝ぐらいの、小柄な女の子が明るく言った。
「死死森さん!宜しくー。私の隣の席空いてるから、ここ座りなよ!」
霊子は、一瞬戸惑いながら「はい」と言って空いている席に座った。
先程の小柄な女の子が、顔を前に出し「死死森さん友達になろ?」と声をかけてきた。
「はい。宜しくお願いします。え~と・・・」
戸惑った霊子を見て。
「あ!私の名前は、宮本里奈、里奈で良いよ。私も霊子って呼んで良い?」
「はい。霊子って呼んで下さい。」霊子は、嬉しそうに言った。
記憶喪失な霊子にしてみれば、転校初日の為、学校の事は何もわからない。
ましてや記憶喪失、そう言った不安のなか、友達が出来るのは希望を手に入れた感じに、近かった。
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