第6話 1人目

クラスのホームルームが終わり、霊子の席に数名の男女が詰め寄った。


皆、霊子と友達になる為に、我が先と言わんばかりだった。


特に男子達は、自分の好感度を上げる為に、自分が最初に印象を残そうとしていたが、最初に行く人が中々決まらない。


そんな中、3人の女子生徒が自己紹介を始めた。


1人目は、ショートボブの黒髪で、顔はどちらかと言うと、可愛いと言うより綺麗な顔立ちだった。


2人目は、少し大柄な体格で、昔で言えば膨よか、瑠璃の髪型を意識してるのか、凄く似ている。


3人目は、黒縁眼鏡をかけていて、如何にもガリ勉って感じだが、話してみると話しやすく馴染みやすい人だった。


「三沢瑠璃、宜しくね。死死森さん。」


それに続いて


「私は村川京子、体重については、ダイエット中です。」


「水野波、眼鏡をかけていますがガリ勉ではありません。」


そんなやりとりを椅子を横に向けて、見ていた里奈は、何かを閃いた様子で提案をした。


「せっかく友達になった事だし、休み時間になったらこの4人で学校案内してあげる。」


霊子は申し訳ないと思いつつも、記憶が蘇る為には、学校を知る事が1番の近道だと本能的に気づいた為、お願いする事にした。


「宜しくお願いします。」


3人ともフレンドリーな感じで、任せなと言わんばかりだった。


元々瑠璃は4人姉妹の長女で、面倒見が良かった。


男子はずっと決まらずにいたが、そんな姿を瑠璃達は大きなため息をしている。


呆れながら、その目はまるで幼稚園児でも見るかのような哀れみな視線だった。


そんな目線も気がつかず、授業の始まる予鈴が鳴るまで続いた。


9時のチャイムが、キーンコーンカーンコーンと学校全体に、響き渡る。


生徒たちは、急いで席に座った。


授業が始まると、進学校かと言うぐらい終始集中していた。


中には後ろの生徒達とお喋りしていた人もいたが、何も記憶がない霊子にしてみれば、その時間は重く苦しい空気に感じていた。


そんな事を気にしている内に、昼休みになっていた。


里奈と瑠璃達は、席を繋げて昼食をした。


席の場所は、霊子の右隣が里奈で、右斜め前が波、正面が瑠璃で左斜め前が、京子になった。


両手を合わせて「いただきます」と5人とも声を合わせて言った。


太っている京子は、やはり他より弁当箱が大きく、1人だけ運動会に使うような三段箱だ。


他の4人は女性らしい小型の弁当箱で、中には京子の食べっぷりを見て、食欲を失せている人もいたが本人は気にも止めてない。

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