異世界副将軍
異世界に転生した。
とはいえ、儂の暮らしてたのは江戸幕府。異世界の概念すら一般に広まっていないし、もちろん異世界ファンタジーもNAROU系も存在しない。
が、儂は気が付いたら異世界に転生しておった。
しかも、儂の死後に語られる儂の漫遊記(後世の創作)や、何百年も先の未来で流行っている物語の知識を与えられて。
なるほど、チートか。ハーレムか。
草原スタートであったが、街の位置はなんとなくわかり、その道中で魔物に襲われている商人にも貴族令嬢にも出会わなかったため、門兵との会話イベントの後はギルドに居た。
※ギルド 異世界において必ず行くべき便利なところ
「あら、いらっしゃい。身分証は仮なのね。じゃあここで魔紋登録して、正式な身分証明書を作るのが目的かしら? それとも冒険者として活動するつもり?」
眼鏡の似合うギルド嬢に、
「冒険者として活動したいので、基本的な説明などもお願いできるか?」
と掛け合う。
ちょうど、昼時で、空いていた時間だったのもあったのだろう。
ギルド嬢は丁寧に説明してくれた。
登録するとルーキーという解級が与えられる。そこで、なんでもいいから実績を積めば、Fランク冒険者となれる。そこから先はランクに応じてクエストをこなしたり、昇格試験を受けたりと。Sランクが最高で、ただしここ何百年かの間はSランクの冒険者は誕生していないらしい。
Sランクの昇格条件が、『国や世界の存続が危ぶまれる事態の解決』なので、まあ世界は平和じゃったのだろう。Aランクはポツポツと何十年かおきぐらいには誕生しているらしい。
そこそこ高貴な身分の生まれであったから、一人で冒険(まずはお手伝いレベルの簡単な仕事から、安全な場所での採取クエスト、弱い魔物の討伐とステップアップ)するのは、多少面倒でもあり、それ以上に新鮮で楽しくもあった。
冒険者というのは、自由で自身の能力次第では時間にも縛られない。
例えば、冒険者になって1か月後の儂であれば、半日魔物を狩れば1週間分の最低限の生活費が稼げるというような状況である。もちろんチートあってのことだ。
だが、そういう生活、週に1日2日ほどは魔物を狩って、それ以外では魔術研究やそれ以外の趣味に時間を使うという生活をギルドに把握されると、如何せんギルドから頼られるようになってしまう。指名依頼という奴じゃ。
儂ぐらいしか倒せない魔物の討伐から始まって。
Bランク冒険者と連携して魔物暴走を食い止めたり。
何故か復活した魔族と対決することになったり。
魔物に乗っ取られた領土を取り返したり。
一人でもなんとかなるぐらいの案件であったが、ギルド側の推薦で、他の冒険者と共にいくつもの依頼をこなしていった。
「ご隠居~、そろそろ休みましょうや! ちょうどいい茶店がありますよ!」
こいつは、うっかりものではあるし、何の役にも立たないが、何故かついてきてる奴。
「ハチの食い意地にも困ったもんだ」
そう言うのは、格闘に秀でたやつ。
「まあ先を急ぐ旅でもありませんし」
いまいちよくわからない剣士。
「ご隠居。今から向かう領地の貴族についての情報ですが……」
「商業ギルドと領主が癒着し……」
「領民の生活を苦しめているようです」
諜報能力に長けた忍者的なキャラ被りの男2、女1。
一応それぞれの中では役割分担は出来ているらしい。
というような、仲間たちと共にだらだらと異世界を練り歩く生活に行きついた。
儂もいい年ではあるし、何故かタイミングよく湧いた魔王を倒してSランクを飛び越えてMランクの冒険者になったので、それを機にギルドからの依頼は止めて貰って、言われるとおりに隠居暮らしである。
まあ、よっぽどの窮地になればギルドから連絡は来るのだろうが。
とはいえ、従者たちのレベルも上がりきっているので儂の出番はないじゃろう。
実際のところは儂が圧倒的に強く、最強 of the 最強ではあるのであるが、儂の力を発揮する場面はそうそうない。
魔王ですら、多分従者たちで倒せるであろうし、その辺の貴族ぐらいであれば……
「控えろ! 控えおろう!」
儂の魔力紋が刻まれたギルドカードを見せれば一発で膝まづく。
S(スーパーともスペシャルとも)ランクのさらにその先。
M(ミラクルと言われているが、水戸でも光圀でもある)ランクのカードに逆らえるやつなどいないのじゃから。
歴史は繰り返すというが……、
いや厳密には繰り返しではなく、後世のフィックションをなぞっているだけなのじゃが。
この世界では既に『ミツクニ・ミトの漫遊記』とかいう出版物が広まり始めておるらしい。
なお、そのバリエーションは豊富にあって、儂の従者が主人公になってるやつのほうが人気があるらしい。
儂がメインのやつは、うっかりにすら及ばないとか。
まあ、儂主体のやつは健全路線が多く、うっかりはカップリング相手が多種多様で人気があるということらしのではあるが。
ハチ×ミトがブームになりかけた時にはありとあらゆる人脈使って全力で阻止したし。
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