ままならない転生
(前略)
概略:神様の死んでしまったので、異世界転生の説明を受け始めました。
『そういうわけで、行く世界は同じじゃが、転生コースが2コースある』
「2つどちらか選べるんですか?」
『そういうわけじゃ』
神様が提示してきたのはふたつのコース。それぞれの概略はこうだ。
【安心安定転生コース】
異世界基本パックという、異世界言語の翻訳とか、読み書き計算、呪文詠唱とかが母国語(俺の場合は日本語)レベルで使用可能。
そこそこの転生特典チート能力が得られて、努力すればそれなりの結果が得られるという、その名の通り、比較的安定のコース。
まあ比較的というか比較対象はもうひとつしかないのだが。
そして、その比較対象のコース。
【最低限生活能力&最強能力で波乱コース】
最低限生活能力というのが、ひっかかるところではある。が、こちらのコースの魅力は、転生特典のチートが半端なく、ほぼほぼ努力なしで最強に至れるというコースである。そもそも最初から強く、さらには取得経験値にブーストがかかるような感じらしい。
また、最低限生活能力というのは、別に家事とか収入そういうのではなく、安定コースでは完璧にサポートされる言語翻訳とかがちょっと劣るらしい。とはいえ、方言間の差異ぐらいなもので、現地人からすれば片言っぽく聞こえたりとかそういう程度で日常会話には困らないらしい。
しばし悩む。どっちにせよ生きていく上では困らなさそうだ。であれば考えるのは、特に命とかに影響のない日常生活で多少の不便をするかしないか、命に係わる戦闘について、そこそこ安定を選ぶか、万全にするか、ということになるだろう。
「波乱コースでお願いします!」
言葉とかは、徐々に覚えていけばいいだろう。
『では、世界を救ってくれ。焦らずともよいからな』
概略:
森の中で、転生されて、神様がくれたマップ機能で近くの街に向かった。途中出てきた魔物は、神様がくれたかっこいい剣で簡単に倒せた。倒すと、魔物は宝石のようなのに変わって消えた。
「さて、街についたか。多分魔物を倒して手に入れたこれが、お金になるはずだ。ギルドを探そう。今後のこともあるし」
さすがに、ギルドの位置はマップには表示されなかったので、露店のおじさんにでも訊ねようと思った。元々アイテムボックス的な異空間に多少のお金は持たされてはいる。
が、まず通貨単位とかがわからない。ちょうど小腹も空いたし、瑞々しそうな果物を買うついでに情報を仕入れよう。
「おっちゃん、そこの赤いのひとついくらですか?」
「なんげえ、ぬーちゃん、えらいんまったんなう。遠けりからかむぅん?」
全然通じない。自分の発言は日本語(ほぼ標準語)っぽく認識されてるのだが、相手の言葉が耳には日本語っぽくはあるが、そこそこ理解不能な何かに聞こえ、ただ意味はなんとなくわかる。
お兄さん、凄く訛ってますね。遠くから来たんだろうね。ぐらいの意味だ。
耳で聞いても理解できないが、頭では何故か理解できるのでそこまでは困らないが違和感がすごい。あと、向こうからしたらこっちが訛ってると感じられてるのが微妙に恥ずい。
「りんご(厳密には違うがそれっぽい果実)は一個20現地通貨です。(意訳)」
おじさんは親切に教えてくれた。
通貨もめんどくさい。銅貨だけで……
超特大銅貨、特大銅貨、大銅貨、大よりの中銅貨、大寄りの中銅貨よりの中銅貨、中銅貨、小銅貨寄りの中銅貨寄りの中銅貨……などと種類が多い。
いや、これって、安定コースだと解消できるのか?
アイテムボックスを改めて確認すると、多種多様の硬貨が収納されている。見た目は頭に浮かび、それぞれ取り出せそうなのだが、名称がわからない。
とりあえず、銅っぽいものを、2枚取り出してみる。
「これでいいですか?」
「いや、それは大よりの中銅貨の10分の1の価値のやつだから、2枚じゃ全然足りない(意訳)」
なるほど。だが、これの10倍の価値があるやつがどれかわからん。とりあえず、細かくはなるが20枚出して払えばいいだろう。
「細かくなってすみませんが、これでお願いします」
と言って、俺は、大よりの中銅貨の20分の1の価値のやつを20枚取り出して渡した。
「そんなにいらねえ。それに2個分には足らない。チップか? そうじゃなかったら返すが。おまけして2個は渡さんよ(意訳)」
「え? 1個で20現地通貨じゃないんですか?」
「だから、これだけでいい(意訳)」
そういうとおっさんは、12枚の銅貨を取って残りを返してきた。
その後やりとりをしてわかったこと。この世界は6進数だ。別に指が6本あるとか、片手で3本になってるとかそういうことはないが。
確かに、6とか12は割り切れる数字が多くて便利だという話を聞いたことがあるが。10進数は実際問題として扱いずらいだとか。
しかし、換算を自力で行うとすればこの先面倒すぎる。
1、2、3、4、5、で10になって(10進数的にはまだ6)、
11(7)、12(8)、13(9)、14(10)、16(11)で20(実質12)となるのか。
桁が少ないうちはまだいいが、100は6×6で多分36ぐらいのはずで、1000はなんだ?
あと、翻訳される(というか耳に聞こえる)右が自分の中での上方向で、左が右で……というように、方向に関してもかなり面倒くさいものだった。いや、理解はできるのだが。年月日時分秒も聞こえる音と意味がこんがらがってた。
この世界は、暮らしづらいのは確かなようだ。
ただし、日常生活だけ。
チート能力で、ステータスはかなり優遇されているはず。なんとか暮らしていけるだろう。
おじさんに聞いたギルドの道すがら、ステータスを確認しようとふと思いついた。
ステータスの確認のためには、ステータス・オープンと念じればよいらしい。ただし、現地の言語で。
カタカナにすると、シュチュエルメヌタトタトシンヌメール・オオオペルンヌだ。
まず、正確に覚えるのに苦労し、さらに、半角カナの部分でかなり頓挫しかけたが、なんとかステータス・オープン(現地語ではシュチュエルメヌタトタトシンヌメール・オオオペルンヌ)することに成功した。
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ナまえ:蜷咲┌縺励?讓ゥ蜈オ陦
レポヌ:1
種ぞく:ヒト?
HTIB:
NIDじDA:123542
B:5413154
BBB:54321
AGI:414
hujiko:53154
gsぢ:35421
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いや、文字化けしとるし、ステータスの意味わからん!
強そうだが、ここも6進数っぽいな……
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