第14話 無力感
次の日魚谷は、喜恵ちゃんの母親の実家に会いに行った。仏壇に飾られた母親の写真は、今までの暗い事件を微塵も感じさせない程さわやかな笑顔をしている。
お線香をあげて、手を合わせるとやつれきった顔の初老の両親がふたり小さな方を震わせている。
喜恵ちゃんからみて、おばあちゃんの方はハンカチで涙を押さえながら魚谷にお茶を出した。
おじいちゃんは、口を開かずに近くのテレビをただ見ている。
「喜恵はまだみつからないのですか?」おばあちゃんの質問に魚谷は「…まだみつかりません。」としか言えなかった。「夜は寒いし、お腹もすいているだろうに、可哀想で可哀想で…」言葉を詰まらせ泣いている。
「ほら、泣いても仕方ないだろう。泣いたって喜恵が帰って来るわけでもないんだ。」おじいちゃんがおばあちゃんを叱るような口調でそういった。
魚谷は帰りの電車で無力感を引きずりながら、車窓に流れるオレンジ色の夕焼けをただただ眺めている。
この夕焼けの空の下に喜恵ちゃんも元気でいて欲しい。そう思わずにはいられなかった。
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