第3話 大好きなハンバーグ

 貴恵ちゃんはお風呂から出て、新品のかわいいパジャマを着るとリビングの前にあるテレビ前のソファーに座る。

 男は、貴恵ちゃんの前に麦茶とクッキーを置いて、テレビのリモコンを教育番組にあわせ笑顔でこう話す。

 「今から貴恵ちゃんの好きなハンバーグを作るから、これ見て待っていてね?」

 貴恵ちゃんは笑顔で元気よく頷く。

 「うん。」

 男はキッチンへ行き、料理を始めた。

 神経質そうな手つきで挽き肉と玉ねぎなどをあわせて耐熱ボールの中で丁寧に混ぜる。

 「わたる手伝うよ。」

 男の背後から、女性が声をかける。双子の妹の楓だ。

 「貴恵ちゃんずっとここに居たいんだって。」

 楓がフライパンに丸めた挽き肉を入れるとわたるが焼き始めた。

 「居たいだけいればいい。今まで親からいじめられてきたんだから。ここには誰もいじめるような奴はいない。」

 「そうだね。ここは、天国みたいなものね。」

 わたるは、付け合わせのフライドポテトを別のフライパンで揚げ始める。

 「貴恵ちゃんは、もうパパとママに会わなくても寂しくないんだって。」

 楓はフライドポテトを菜箸でいじりなが油によく馴染ませた。

 「毎日いじめられて本当に可哀想だった。貴恵ちゃんには幸せになって欲しい。」

 わたるは、真剣な表情でそういった。

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