第2話 児相 小山所長

 魚谷が児童相談所に戻ったのは、夜の

8時をまわった頃だった。朝からこの事件にかかりきりだったため、魚谷のデスクは書類の山になっている。上司の中谷と共に所長室へはいると、テーブルに弁当が4つとお茶が用意されている。所長の小山と副所長の加藤がすでに座っていて、中谷と魚谷を待っている状態だった。

 「ご苦労様。まあ、食べながらやりましょう。」

 合理的な小山所長は、弁当のふたを開け割り箸を割ると大きな口を開けてご飯を頬張った。それに続き周りも弁当を食べ始める。

 「春日原貴恵ちゃんは、確か保護したことがある子だよね?」

 小山所長は、口いっぱいにつめたあと、お茶で流し込む。

 「はい。先週保護しましたが、両親との話し合いで自宅へ帰りました。しかし、昨日保育園から貴恵ちゃんの脇腹にアザのようなものがあると通報を受けて、両親とは今日面接する約束でした。」

 魚谷は書類を見ながら続ける。「通報があった日に、貴恵ちゃんはどうしたいのか保育園で確認をとったところ貴恵ちゃんは、帰らないと親に怒られるから帰りたいということだったため、翌日両親へ面接し、保護しますと話す予定でいました。」

 小山所長は、両親からこうなったのは保育所と児童相談所の責任だと苦情の連絡があったことを中谷と魚谷に伝え、後は警察に任せ、今日はもう帰ろうと話した。

 確かに考えても仕方ないが、泊まり込むつもりでいた中谷と魚谷はあれ?と所長の言葉に違和感を覚えた。

 

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