8.Twinkle, twinkle, little star

きらめく、きらめく、小さな星よTwinkle, twinkle, little star, How I あなたは一体何者なの?wonder what you are!


 首を左右に振りながら、少女は歌う。心が穏やかになる、柔らかで伸びやかな歌声だ。


「変な歌だな、なんだそれ」


 少女は、ぱっと歌うのをやめ、声の方へ振り向く。振り向く動作で、ふわりと長い濃茶の髪がふわりと揺れる。

 そこに立っていたのは、金髪の青年。筋肉質でありながらもすらりとした肉体に、ワインレッドのスーツを纏っている。その腰には、一振りの剣を差していた。それが絶妙にミスマッチを起こしている。

 彼の登場に、少女はぱっと笑顔になった。


「モルちゃん! いらっしゃい!」

「その呼び方、俺は止めて欲しいって言ったよな、クロックフォード嬢」

「それなら、私のこともレイラって呼んで欲しいって言ってるでしょ? それを聞いてくれない悪い子ちゃんの言うことは聞きませーん」


 ぷいっと、レイラは青年から顔を背ける。

 彼はハァと大きく溜息を吐くと、「レイラ」と彼女の名を呼んだ。それだけで、少女の顔がぱっと花咲く。


「うん、モルガンくん。——ええと、今のはね『きらめく小さなお星様』っていう歌。私にとっては、昔からの子守歌なの。弟によく聞かせてたの。いい子に寝てねー、って」

「なるほど。そりゃあ、この場所にぴったりだな」

「うん、この子もちゃんと寝てくれたし! ほんと、ここにいる子はみんな良い子ちゃんばっかりで、有り難いよ。本当、先生のお陰!」


 レイラはけらけらと笑って、先程まで歌を聞かせていた子どもの眠るベッドへ目を向ける。

 そこには、小さな子どもが横たわっていた。

 歪ともとれるほど口角の上がった顔に、八の字の髭面の白い仮面を付けた子ども。

 レイラの作り上げた、至高の絡繰からくり人形。


「……我が主人マスターは、お前の舞台を期待しているそうだぜ? どんだけ楽しいものになるのかってな」

「あはは、それじゃあ頑張らなくっちゃ!」


 レイラは、細指でつうっと白い仮面の表面を撫でる。


「アレン、楽しみに待っててね。お姉ちゃんの研究の成果、早く貴方に見せられるよう、頑張るから」


 彼女はそう言って、小さく笑った。

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