時の村

この村には時間が流れなかった。

特になにもなく、あるとき突然時間がとまったのだ。

人々は戸惑った。

空腹は消え、睡眠欲もなくなり、ずっと起床している状態。

時間のない混沌とした時間は、人々を曇らせたが、

曇らせた中で、ある者が「山でも掘るかあ」と出かけたのを

きっかけに、各々がやりたいことをやるようになった。

だが、自然と疲労感もなく、夜もくることがないので

何かに没頭する村人達。

だが、それでも飽きはくる。

すると、ある男はいった。

なにか食べたい、と。

食欲があるわけでもなく、それとなく言葉にしたような表情で。

それを人々は止めるわけでもなく見ていた。

男は好物のトマトをひとかじりして涙を流し呟いた。

「これが……生きることなんだ」

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真世代 新浜 星路 @konstantan

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