第4話

次の日、翔也は学校にきた。

「真人、昨日はありがとな!」

翔也は僕の肩をポンッと叩いた。

僕は翔也に向かって笑ってみせた。


昼休み。いつも通りに校舎の裏に弁当を持っていく僕を翔也が止めた。

「たまには教室で食べようぜ」

僕は頷いて、教室で弁当箱を開けた。

「よう、翔也。

最近、林と仲良いな」

クラスの中心にいる、武内佑斗たけうちゆうとが僕の方をちらりと見て言った。

武内君はクラスの中心にいるような人だ。

僕は焦った。僕はクラスで空気のような存在。

そして、翔也は武内君と同じく、クラスで目立つ人。

僕なんかと仲良くしてくれているのが、めったにないことなんだ。

「ああ、真人めっちゃ面白いんだよ」

「ふうん」

武内君が僕をじっとみた。

険しい顔だ、怖い。大丈夫、僕は悪いことしてない。

「まあいい。

今日の放課後、久しぶりに遊ばないか?」

僕は正直に言うとショックだった。でも、翔也と今日も遊びたいだなんて、わがままを言ってはいけない。一人占めしたいなんて強欲は今すぐ捨てるんだ。

「いいぜ。じゃあ、真人も一緒でいい?」

僕は翔也の方を勢い良く見る。

何を言っているんだ。武内君が許してくれるわけないだろう。僕みたいな地味なやつと放課後いたくないよ、絶対。

「分かった。いいだろう」

いいの!?

武内君は思いの外、さばさばした性格をしていた。


放課後になって、ゲームセンターに向かった。

翔也がクレーンゲームで欲しいものを見つけたから、しばらく全員でクレーンゲームをしていた。

数十分後、タイミングを見計らって武内君が翔也に声をかけた。

「おい、そろそろ別のをやろう」

「なんで?」

翔也は首をかしげた。

「実は俺そんなに金を持っていないんだ。お小遣いを既に結構消費してしまったからな。

だから、あの太鼓のリズムゲームみたいな、安い値段でたくさんできるやつをやろう」

翔也は軽く頷いた。

「いいぜ。これ以上やると、後戻りできなくなりそうだったんだ。

普通に買った方が安い」

翔也がやっていた台を見ると、景品が傾いているが、なかなか落ちそうになかった。

他の人がチャレンジしているのを見ると、アームが弱すぎて全然商品が持ち上がらない。

あれは取れそうにないと思う。

「それじゃ、俺トイレ行ってくるから」

一方的に告げると、翔也は走っていってしまった。

僕は武内君を見て思った。

き、気まずい……。

共通の友達である翔也がいない今、僕はどうしたらいいか分からなかった。

無言なのもあれだし、ちょっと話しかけてみよう。

「あの、武内君……」

「佑斗でいい」

「は、はい!佑…斗」

佑斗は僕をじっと見た。そんな険しい顔をしないで欲しい。僕、なにか失礼なことしちゃったかな。

「そんなに怖がるな。

俺は昔からこんな顔だ。そのせいで、女子が寄りつかないばかりか、男子もあまり話しかけてくれない。

だが、俺は一部の人だけでなく、みんなと仲良くなりたいと思っているから、気をつかわなくていいし、気軽に話しかけてくれ」

そうだったんだ。僕は佑斗を見る目が変わった。

人間、内心何を考えているか、分からないものだ。

「お待たせー!」

翔也が戻ってきた。

僕たちは太鼓のゲームを3回やってから、ゲームセンターを出た。


翔也との遊びも楽しいけど、翔也のおかげで話した他の人も優しくて、僕は佑斗をはじめとして、他の人とも仲良くなりたいと思えた。

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