三、変態!アホ!



「ありがとうございました」


「いえいえ~」


「また困ったら何か言ってくれ。たぶん、君は重度の方向音痴だ」


方向音痴……。

え?マジで?そんな気…なかったけど。

真琴がいてくれたからなぁ。


「そうですね。気をつけます」


「あぁ。じゃあ、また」


「バイバイ!」


「ありがとうございました…。って、キャ!?ちょっと!?真琴!」


真琴が私を抱き締めている。

執事としてその行動はどうなのよ!?


「真琴、やめて?」


「お嬢様、やっぱり私がついとけばよかったです」


掠れた声で言われ、どう反応すればいいのか困る。

何をそんなに悔いているの?

教えてよ。


「大丈夫?」


そう言いながら、彼の癖っ毛の髪を撫でる。

ふわふわしていて、真琴にぴったりだ。


「お嬢様が取られるって…思いました」


「……。そんなこと、ないわ。私に興味を持つ人なんていないわよ」


確かに前世よりは美人さんになったけどさぁ。

先程、絶世の美少女か!みたいなヒロインを見たし。

攻略キャラ見たし。目が肥えちゃって、千景の顔なんてモブ顔だよ。


「真琴、高校では私の執事でなくてもいいの。

林真琴は普通の男子高校生。進学校に通う、頭のいい、ね」


「でも、お嬢様は──」


真琴が何か言おうとしたとき、おーい、と声がかかった。


「ドアの前でイチャイチャしちゃ駄目ですよー」


こいつは…!

安西友だ!犬系キャラの彼は、ドSな一面を持っており、乙女ゲームのメインヒーローっ!

長身で、太陽に当たるとキラキラする髪!まさに美少年!


「してません!」


「ふーん、そうなの?林真琴くん」


「何で名前知って…」


「ごめんね。会話聞いちゃった。あ、俺は安西友。よろしくなっ!」


笑顔ごちそうさまでーす!

そう思っていると、後ろからドンッとぶつかられ、私は真琴と友に支えられた。


「あっ、ご、ごめんなさい!」


この声は…、


「海宇良さん……」


真琴が少し呆れた目で見る美少女、海宇良日向だ。

本当は、友にぶつかり筆箱を落として、外れたストラップを残していってしまう…というものなんだけど。私がいたせいでそれが出来なかった…というわけね。


「あっ、真琴くん!」


キラキラした瞳で真琴を見る日向は下心満載だ。

彼女のサポートキャラにならないといけないのかぁ…。

少し、不安。


……っと、それより。


「真琴、安西くん、その…手を…」


「えっ!?あ、ごめっ…」


「すみません、お嬢様!……成長されましたね」


「は?」


「Eでしょうか、Fでしょうか?どちらかですよね」


恍惚とした顔でそう語る真琴。

もう、お父様に頼んでやめてもらおうかしら。


「真琴、一応確認するけど、触った?」


「いいえ!それは断じて!していません。見た感じですよ」


「やっぱり、真琴って気持ち悪い……。変態!アホ!」


触ってないのは分かったけど見ただけでカップが分かるのは怖い!

気持ち悪いよ、真琴!

ゲームではその変態さが好きだったけど!


───真琴の変態!!!







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