魔女の教え(祈り)

tada

魔女の教え

 小学四年の春頃、クラス替えが行われたばかりのクラス内では、担任の悪口で盛り上がっていた。

 なぜそんな話題で盛り上がっていたかというと、私達四年一組の担任は子供から絶対的に嫌われている先生だったからという理由だ。

 今にして思えばあの先生も良い先生だったのかもしれないけれど、小学生時代は、そんなこと少しも考えたことはなかったと思う。

 まぁ小学生とはそういうものだとも思う。意味もなく先生という職業を嫌う、それが普通。

 だけれどその普通の小学生の中に、明らかにクラス内から浮いている女の子がいた。

 名前は知らないけれど、皆からは[魔女]と呼ばれていたはずだ。

 そんな魔女の印象は、一言。怖いだった。

 人とはほとんど会話をせず、仮にしたとしてもぼそぼそと何かをつぶやくだけ。自分から喋り出したと思ったら、呪いの言葉をぶつけてくる。

 そんな彼女は、クラス内が一つの話題で、盛り上がっている中で一人だけ全く違う話をしていた。

 話の内容は、こんな感じだったと思う。

 学校の近くにある、ボロボロの神社で願いごとを言う前に、こう言うと絶対にお願いを叶えてくれるよ。

「神さま。私のお願い聞、い、て」

 てね。魔女は最後にそう言い残し黙ってしまった。

 こんな嘘くさいおまじないそもそも誰も信用しようとは思っていなかったはず。(そもそも話の発生源が魔女だし)

 だけれど私はなぜか話を聞いたその日に、神社に足を運んでいた。

 もちろんその話を信じきっていたわけではないし、何かどうしても叶えたい願いがあって、少しでも可能性をあげたいなんて気持もなかった。

 だから本当にただの出来心だったのだと思う。

 私は賽銭箱の前に立って言った。

「神さま。私のお願い聞、い、て」

 この言葉を言ったからといって、本殿から突然神様が出てくることはなく、ただ単に風が私の髪をなびくだけだった。

 そんな私は、続けてお願いした。

「担任の先生を他の先生と交換してください」

 今にして思えばこんな願いが一番最初に思い浮かぶことに疑問に思うけれど、小学生の頃はやっぱりそういうものかもしれない。

 そして願いを言い終えた私は、背中にランドセルを背負って、もうやることもないので帰ることにした。

 

 そして次の日、私は普通に学校に行った。そして普通に担任も変わらずにいた。私は少しがっかりしつつも授業を受けた。まぁ最初からあんな呪い信じてもいなかったけどね。

 そんなことを考えながら家に帰ると、父が死んでいた。

 心臓に包丁が刺さって死んでいた。

 一目でわかるくらい死んでいた。

 そして手が血まみれの担任が、台所に立っていた。ついでに言うと担任は笑っていた。

 台所の角に母親は座って、ぶるぶると体を震わして、今にも失神しそうな雰囲気だった。

 この光景を見た瞬間私は、玄関に置いてある固定電話で、警察に電話をかけていた。

 幸い担任は、電話を止める様子もなくただただ笑っているだけだった。

 ほどなくして到着した警察に、私と母は保護され、担任は手錠をかけられていた。

 その後久々に学校に行くと、当たり前ではあるけれど、四年一組の担任は変わっていた。

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