第7話 成長と新しい武器。

ダンジョンに潜り、体感で1ヶ月ほどが経過した。



 俺は、現在50階層まで進み、着々と力をつけている。


 現在、俺は50階層のボス部屋の前で軽くストレッチをして、戦いに備えた。



「うし、やるか」



 そう呟き、目の前の戸を開ける。


 すると、そこに現れたのは、体長は3メートルを優に超え、赤褐色の強靭な皮膚を持ち、ツノを生やした大鬼。


 オーガだ。



「ガァァァァァァァァッッッ!!!!」



 瞬間、鼓膜が破れそうなほどの咆哮。けれど、俺は怯まなかった。



 先日手に入れた『鑑定』のスキルを使う暇は……なさそうだな。



 オーガは真っ直ぐ俺を見据え、今にも襲いかかってきそうだ。


 すぐさま、剣を抜きオーガのもとへ走り出した。



 走りながら、己の成長を改めて実感する。俺は、この1ヶ月の間に数え切れないほどのモンスターを倒し、その度に成長してきた。


 スピード、攻撃力、体力、戦闘における判断力……あげればキリがないが、一番の成長はこれだろう。



「纏雷」



 そう呟き、全身に雷の魔法を宿し、加速する。

 この技は筋肉に電気を流す事によって強化する……いわゆる身体強化の技。


 この技には1〜3のレベルがあり、3まで上げればそれこそ5階層のボスだったオークの何倍もの速さを出すことができる。


 けれど、その代償として5分が限界だし、使用後は動けなくなる諸刃の剣だ。



 俺は一瞬でオーガの間合いに入って剣を振る。



 けれど、さすが50階層のボスなだけあって、俺の高速移動に反応し、それ以上のスピードで拳を振るう。



 だが……



「残念だったな」



 オーガの繰り出した拳は俺に命中……しかし、命中したはずの俺は煙になって消え去る。



「ッッ………!?」



 戸惑った様子のオーガに向け、俺は背後からオーガの首目掛けて剣を振る。



「心綺楼ミラージュ……火、水、光の複合魔法だ」



 一太刀でオーガの首を切り落とした俺は着地し、剣を収める。 



 これが、俺の一番の成長と言える魔力が増え、使える様になった"魔法の並列起動"だ。



《レベルが上がりました》

《エリアボス撃破ボーナス『スキルの書』『武器の書』を獲得しました》

《アイテムをドロップしました『オーガの肉』『オーガの皮』》





***




 その日は、オークの肉を喰らい、水と火の複合魔法でお湯を作って体を洗い、魔物の素材で作った簡易寝袋で寝た。



 もう何度目かのダンジョンの朝を迎える。

 水魔法で顔を洗い、水魔法で歯を磨き、水魔法で服を選択、火魔法でそれを乾燥させる。



 うーん……便利すぎ。



 よく異世界ものの漫画や小説は文明が著しく発達していなかったりするが、こりゃ化学が発達しないわけだ。全て魔法で解決する。便利すぎる。



 魔法の有り難みを感じながらオークの肉を食いながら昨日手に入れた『スキルの書』と『武器の書』を眺める。


 て言うか、ダンジョンここに来てから俺肉しか食ってないけど大丈夫かな俺の身体……



 と、とりあえず考えると怖いのでその話は置いておいて、スキルの書を使う事にする。


 このアイテムは50階層に上がるまでにいくつか手に入れていたため勝手がわかる。



 俺はスキルの書に触れ『使用しますか?』と言うウィンドウが出てくるため『はい』のボタンを押す。


 すると、スキルの書は消えて無くなり、代わりに脳内にアナウンスが響いた。



《スキル『隠密』を獲得しました》



「うっし!」



 俺は静かにガッツポーズをする。

 これは、俺が無事にダンジョンを脱出する為に欲しいと思っていたスキルだ。



「ちょうどいい、ステータス確認しよう」



 そう思い立ち、ステータスを開く。



【サエキ・レン】Lv.89


【職業】忍者

【体力】6900/6900

【魔力】11286/11286

【魔法・スキル】

 剣術Ⅵ、体術Ⅵ、魔力操作、索敵、鑑定、隠密

【固有スキル】

 挑戦者、アイテムボックス、忍術

【称号】

 幸運、2位



 久々に見たが、なかなかえらいことになっている。

 ステータスもそうだが、気になるのは"2位"と言う称号。一体なんのことか分からず、触れてみる。



 2位

 世界2位の称号。



 そうですか……


 何が世界2位なのかは知らないが、取り敢えず放置でいいだろう。



 さて、続いてはお待ちかね……



「武器の書だ……!」



 このアイテムは初めてみる。恐らく……と言うか十中八九武器が出てくるのだろうが、頼むから剣……刀を引きたい。


 今使ってる剣はダンジョンに入る時もらった言わば初期装備。刃こぼれも酷く、火魔法で継ぎ接ぎしてきたが限界を感じていたところだ。



 俺は、強く願いを込めながらウィンドウを開き『はい』の文字を押す。



 頼むっ……刀、刀、刀、刀、刀ぁぁぁぁぁっっ!!



 すると、武器の書は消え去り、目の前に現れたのはーー



「キューっ!」



 尻尾を2つ持った真っ白なキツネ。



「……………は?」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る