第5話 確認と油断。


 オークとの戦闘が終わり、瓦礫の山となったボス部屋に俺は倒れ込んだ。



「さすがに限界だ……」



 今日半日、モンスターと戦い通しで喉も渇き腹も減った。

 けれど食料はなく、水もペットボトル一本のみ。どうにかして確保しなければモンスターに殺されなくても餓死してしまう。



 そんな時、俺は先ほどのアナウンスを思い出した。



《ボス撃破ボーナス『職業選択の書』を獲得しました》



 こういった場合の職業は俺の感からすると魔導師や剣士などと言ったRPGでお馴染みの職業がお約束だ。


 俺はアイテムボックス内にある『職業選択の書』を出現させる。


 言うなれば、これはゲームで言うガチャ。

 と言っても、魔法系のジョブを引けなければ餓死と言う割に合わないガチャだ。


 もし、この世界にゲームマスターがいるなら難易度や仕様について文句を言ってやるところだ。



 俺はアイテムボックスから出現した『職業選択の書』に恐る恐る触れる。



 どうか魔法系のジョブが来ますようにーー!!



 そう、強く念じながら。



 すると、それは光を放ち、消滅する。


 その代わりに、頭の中に再びアナウンスが響いた。



《職業『忍者』を獲得しました》

《固有スキル火の術、水の術、風の術、土の術、光の術、影の術、雷の術、氷の術、回復の術を獲得。これらを複合し特殊エクストラスキル、忍術を獲得しました》



 …………これは、当たりなんじゃないか?



 一瞬だが"水の術"と"火の術"と言うアナウンスが聞こえた。


 それと同時に、身体全身に力が漲っているのが分かる。まるで、どうすればスキルが使えるのか最初から知っていたかのように俺は手から炎を出した。


 他の術も試してみると、俺のイメージ通りに発動し、どうすればコントロール出来るか分かる。



「よっ…………しゃぁぁぁぁぁっ!!!!」



 俺は拳を握りしめ、ダンジョンの空目掛けて掲げた。


 たぶん、今が人生で1番嬉しいんじゃないだろうか。それもそうだ、なにせ餓死の心配がなくなったのだから。



 その後、俺は気は進まなかったが、ゴブリンの肉を火の術で炙っていく。


 念のため、こんがりと焼いておく。ゴブリンの肉なんてもちろん食うのは初めてだ。食いたくない……が、食わなきゃ死ぬからな。



 南無三っ!!



 俺は思い切ってゴブリンの肉にかぶり付いた。


 暫く咀嚼して、飲み込む。



 …………うん、まぁ……うん。



 不味くはない……が、美味くもない。

 考えてみれば、塩も胡椒も付けずただ焼いただけの肉だ。美味いわけがない。


 けれど、食わなきゃ死ぬので一気に掻き込んで水の術で生成した水で流し込む。



 その後は獲得したスキルなどを確認し、ボス部屋で眠りについた。





***





 次の日、硬い床で寝た割には何故かスッキリと起きれた俺はステータスを確認する。



【サエキ・レン】Lv.16


【職業】忍者

【体力】860/860

【魔力】2600/2600

【魔法・スキル】

 剣術Ⅰ、体術Ⅰ

【固有スキル】

 挑戦者、アイテムボックス、忍術

【称号】

 幸運



 なんと、先のオークとの戦闘でレベルが6つも一気に上がっている。


 体力も800を超え、スキルも2つ増えた。

 剣術スキルを手に入れたことで、剣速が上がったような気もするし、体術のおかげで体もよく動く。



「うしっ……行くか!」



 念入りにストレッチをして俺は6階層に降り立つ。


 すると、すぐに現れたのは…………



 ぷるんっ!



 ーーーースライムだった。



「うん……まぁ、ちょうどいいけどさ」



 ちょうど獲得した忍術の確認と練習をしようと思ってたところだった。


 けれど、念入りに準備して、覚悟まで決めて、満を辞して現れた敵がスライム。



 なんか、やるせない。



 ほけ〜とスライムを眺めていると、スライムがふるふると体を震わせ、俺の顔目掛けて自分の一部を吐き出した。



「うおっ……!」



 ほぼ反射的にそれを避ける。


 すると、避けた先の地面がスライムの吐き出した一部によって溶け、煙を上げた。



「oh……」







 

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