17話「赤三ッ星」
(こいつは不味いな、流石に上位竜飛竜じゃ手に余るぞ)
ボブ=ボーンズにとって上位飛竜は間違いなく強敵である。速度と航続距離を重視した彼のクライスターでは有効打どころか、牽制攻撃すらままならず。シンプルな追いかけっこですら勝てる目がわずかにある程度。
そもそも上位竜とはC級竜殺機兵で相手をしていい存在ではない。中位竜ですら単機で戦うにはやや厳しいのだから。
無論、自分達に求められているのは敵の制圧ではない。あくまでも火力のある本隊が到着するまでの時間稼ぎ。
いや、流石に中位竜を想定した本隊ですら
だが、彼らが到着するまでに足止めを行う先行部隊にどれ程被害が出るか。
ボブ一人では精々中位竜を数匹足止めするのが精いっぱい。もう一人のB級のナー・マックラーも同レベルかやや下程度。話を聞く限り初陣ではないようだが、ノイジィ一人に上位飛竜を受け持たせるのは論外。
(どうする、退く選択肢は無し。ナーにもノイジィにも無理はさせたくなきゃ――)
ならば選択肢は一つだけ、自分が上位飛竜を相手するしかない。
「ノイジィ! ケーブルを切る、俺が突っ込むから倒せるのを適当に狙え!」
ライズルースターの瞳が青く二度、光ったのを確認し
無線通信などという超技術は地球にしか存在しない。故に事前の綿密な計画なしに有機的な連携は夢物語。それこそ通信を繋いだまま戦闘するのは事実上不可能なのだから。
通信線を巻取り、突撃しようと竜炉に火を入れスラスターを唸らせようと操縦桿を押し込むが。それよりも早く。
赤が三度光る。
その内容を理解するより早く、ボブの後ろから大規模な魔力の渦が巻き起こり。目に湛えた赤い光をなびかせて、ライズルースターが突撃槍を構えて突き進む。
遅れて爆音がボブを襲った。
「ノイジィ!? くそ、マジかよ!」
白い
「ちぃっ!」
止めようとスラスターに魔力を注ぎ込み加速するが、それでもノイジィの方が僅かに速い。質量で倍近い差があってなお、ライズルースターに組み込まれた竜炉が放出する魔力はそれだけの加速を実現している。
「流石はパワーだけはS級の性能って奴だよなぁ、畜生め!」
実の所ボブはライズルースターには何度か乗った事がある。テストパイロットとして調整を行う依頼を請け負って、最低限動かせるレベルまでスクロールを刻み込む程度には。
その上で断言する、あの機体は割に合わない。
とにかく劣悪な機動性、高い加速度を実現した結果操縦性は最悪。曲がる事すら容易ではないその操縦特性を最低限動けるところまで持っていったのだが。
それでもなお、あの機体はじゃじゃ馬だ。
更に機体に対する負荷も大きく、戦闘の度に大規模な整備が必要になるし。莫大な魔力を制御する為に操縦者に大きな負担をかけてくる。
だがその機体を一歩先を行くノイジィは充分に使いこなしていた。真っ直ぐ飛ばすだけでも相応の才能が必要な機体で全力を出していて。
いや、それよりも、先程までの低速域で、安定した飛行を実現していた事実こそ。彼の能力を示している。
更にそれだけに飽き足らず、あの高速突撃の最中。左手に構えた
十中八九共感魔術で赤い悪魔の技能を学んだのだろうが、それを差し引いても圧倒的な才能を感じる。いや、才能があったからこそ悪夢が目を付けたのか。
「ったく、俺の方が先に目を付けてたってのによぉ!」
進路に飛び込もうとする飛竜に向けて
見事に飛竜の頭蓋を捉えて、文字通り叩き落とす。
「さてと、完全に乱戦模様だが――」
目指すは群の中央、ノイジィがどこまでやるつもりか分からないが。確実に命を落す範囲でなければ付き合おうと覚悟を決める。
どうせこうならなければ、自分が似たようなことをやるつもりだったのだ。
ならば、ちょっと後ろからこの吶喊をサポートする程度なら楽な仕事だと。ボブは口元で笑みを浮かべて。操縦桿を押し込み、
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