16話「上位飛竜」


 リバディから出撃する多数の竜殺機兵の姿は、陸路で出撃する本体が到着するまで足止めを行う軽装のC級が主力であるとはいえ中々壮観だ。


 僕のライズルースターを含め、色とりどりの竜殺機兵が次々と都市から飛び立ち。南側に海の広がる街から、地図上での左側。西に向かって進撃を開始する。


 さて、状況をまとめてみよう。


 敵は東側から迫る中位飛竜5匹を中心とした、総勢3桁に迫る竜の群れ。対するこちらはC級竜殺機兵87機、B級竜殺機兵2機で戦う事になる。 



「ボブさん、B級が僕ともう1機って大丈夫なんですか?」



 目的が足止めとはいえ、敵よりも数が少ないのは少々心細い。


 そもそも師匠と互角に言い合う仲のボブさんがC級のクライスターを駆っているのが違和感があるのだけれど。こうして並走して飛ぶ限り、間違いなく僕以上の技量があるのは確実な筈なのに。



『まぁ、その奴は一応スタリオン乗りではあって……』



 話を聞く限り、僕以外のB級な人は戦力として期待できそうにない気がした。



『いや、元騎士団で真面目なんだが。行動は信頼出来るが腕がな』


「後ろから撃って来て、手柄を横取りとかはしてこないんですよね?」


『馬鹿野郎、そんなことするのは機兵乗りライダーとは呼べねぇよ』



 どうやら騙して悪いがの心配は無いらしく。ボブさんや師匠の話を聞く限り、機兵乗りライダーとはかなり誇り高い。それこそRPGでの冒険者ではなく勇者位のポジションなのだろうか?



「了解です、それで指揮系統ってどうなっているんですか?」


『いや騎士団でもない限り、機兵乗りライダー個人の判断で動くのが基本だぜ?』



 唖然とするが、言われてみれば。特に機兵乗りライダーにランクは存在していない。それこそ機体にクラスは存在しているけれど。その地位の高さや実力が査定されていない事実に気が付いてしまった。



「それで、どうにかなるんですか?」


『敵捕捉とか、非常事態発生とか、そういうのは発光信号で伝えるからな』



 確か白が敵捕捉、非常事態発生が赤連続点灯だった気がする。それこそ周囲全体に知らせる時は専用の信号拳銃を使う必要があるけれど、竜殺機兵ドラグーンのライトアイを点灯させるのが一般的だった筈だ。


 とりあえずライズルースターの瞳を青く2回発光させる。



『了解ね。よし、使いこなせているみたいだな』


「赤3回で突撃開始でしたっけ?」


『そりゃ赤い悪夢以外使わねぇ信号だよ。全くなんてこと教えてやがる』



 通信線の向こうからため息が聞こえる。取りあえず青2回の了解、白1回の敵発見、赤連続点灯以外は使わない事にしておこう。師匠から教わった信号は常識的じゃない。たぶんじゃなくて絶対に。


 いや、そもそも赤の連続点灯を使うのは出来れば想定したくない訳なのだけれど。


 ただ後から思い返すと、これはフラグだったのかもしれない。先行していた機体から発光信号が放たれた。白ではない、赤。それも同時に5発。放たれた直後に爆発的な魔力反応が魔導探知機レーダーを塗りつぶす。



『おいおい、マジかよ…… くそ、観測班は何をやっていたんだ!』



 大気が震えているのが分かった、この気配を僕は知っている。一度ルージュクロウを駆り対峙した相手。手に余る最強の機体と、師匠の手出し、いや足出しが無ければ間違いなくこちらが死んでいた強敵。


 あの時と比べればやや細身の体、けれどそのまま腕と翼が一体化した飛竜を巨大化させた姿から察するに質量はこちらど同じか、けれど機動力は間違いなく向こうの方が上、そして今僕の駆る機体は間違いなくルージュクロウより"鈍い"。


 百を超える飛竜と、3匹の中位竜を従えた、白き上位飛竜アークワイバーンが僕たちの目の前に立ち塞がった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る