初めての町、ウエストタウンへ

 Side 三枝 ユキノ


 銃撃音でよく会話が聞こえない。


 見えたのは野盗と呼ばれる連中らしき姿とパワーローダーや車両の姿だ。


 それがシェルターから付いてきた四脚のロボットや浮遊ドローン達に次々と破壊されていく。 

 

 それはまだマシな方だ。


 俺は人間が死ぬところ、ミンチになるところをたて続けに見てしまった。


 レベッカは応戦し、アイはゲロを掃き終えた俺をトラックへ投げ込んで応戦する。


 野盗はたまらず引き上げていった。


「まあこの世界で生きるための通過儀礼みたいなもんだ。最悪な気分だろ? だけどそれはまだ序の口だ。人を殺して虫食えるようになって一応はようこそ、地獄へって奴だ」


 と、レベッカは呆れながら言った。


 俺はマトモに受け答えが出来ず「ああうん」としか言えなかった。

 何も出来なかった。

 頭が混乱して整理がつかない。  

 

「とにかくシェルターへ向かうのは危険だ。このまま町へ行くぞ。町もどうなってるか怪しい」


 そして俺達は町へと進路を進めることになった。



 ちょっとの時間が空いて再びレベッカと二人きりになる。


「銃の使い方ぐらいは覚えろ。お前みたいなのはレーザーピストルがいい」


「じゅ、銃? レーザーピストル?」

  

「お前まさかまた襲撃が遭った時、ゲロ吐いて女に助けられたいか?」


「そ、それは――」


 それを言われたら何も言えなかった。


「ならイヤでも覚えろ」


「う、うん」


 そしてレーザーピストルの扱い方を教えてくれた。

 安全装置の外し方。

 弾の込め方。

 

 途中、軍の小さな拠点だったみたいな場所でトラックを止めて途中で射撃訓練なども行った。


「まあまあだな――」


 射撃訓練を見た自分の感想がそれである。


 そうして再び町へと急ぐ。



 町の名前はウエストタウン。

 分かり易い名前だ。

 規模はそこそこ。


 レベッカもシェルターに来る前はそこに滞在していたらしい。


「あのシェルターが私が来るまでは開かずの間みたいな感じで有名だったんだ。何人もの連中があそこに訪れて断念した。ウエストタウンでも有名な話だ。まあその辺りはアイに聞いた方が早いな」


「ふうーん」


「それにしてもイヤな予感がしやがる――」


 先程の野盗の事だろう。

 あんなのがうろついているんじゃ正直外に出るのがリスクが高すぎる。


「いいか? 野盗は一体見つけたら複数人いると思え――それと情けは掛けるな。確実に殺せ? 絶対だぞ? やらなきゃ私がやる」


「あ、ああ――」


 と、恐い顔で言われた。

 あんな経験した後じゃ頷くほかしかない。


 そう思った矢先、トラックが停車した。


「遠方にウエストタウンを確認。現在戦闘中です」


 アイの報告にレベッカは「嫌な予感が当たった!!」と舌打ちした。


「どうしましょう? 助けに行きます?」


「私達はウエストタウンにビジネスしに来たんだ。恩売りつける傍ら助太刀するぞ」


「大丈夫なのか?」


「ウエストタウンはお前のような腑抜けばっかじゃないからな! 私達の戦力も遭わせればどうにかなるだろう!」


 と、俺に毒を吐きながらそう答えた。

 


 ジャンクのバリケードで囲まれた町。

 タレットや見張り台などもある。

 ウエストタウン。


 パワーローダーや武装した車両まで出して野盗と応戦していた。


 俺とアイはトラック内で後方待機。


『流石ピカピカの新型!! 凄いもんだぜ!!』


 レベッカさんはFー6ベルセルクを身に纏い、人間にはとても持てない巨大なキャノン砲を持って出撃する様子だった。


 セントリーロボットと浮遊ドローンはレベッカさんの援護に回した。


『ヒャッホー!!』


 Fー6ベルセルクは背中や各部のブースターを起動させ、凄い勢いで飛んでいった。

 鈍重なイメージから掛け離れた機動性だった。


 ただ俺はそれを呆然と見送っていた。

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