第6話 こころのありか

 心の在りかを、探して戸惑う。

 図鑑や絵本、分厚く重い本に至るまで。

 幼い私は探して探して、探し回った。

 けれども、心の在りかは、分からなかった。


 心の在りかを、探して迷う。

 ネットの海や、大図書館に至るまで。

 子供の私は探して探して、答えを得た。

 心なんて、感情に過ぎなかったのだと。


 心の在りかを、探して彷徨う。

 近しい人や、遠い誰かの感情を覗く。

 大人の私は知識を手に入れ、そして悟った。

 心は、人類にとって邪魔でしかないのだと。


 それでも私は、心を探す。

 いつか、本物の心を手に入れるために。

 決して目に見えぬ、決して無くせぬ1つの器官を。

 私は、いつまでも探し求めるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る