第37話学校生活の始まり


 なんとか二週間目に、王都ロンドニウムに帰り着くことが出来た。学校を卒業されたお兄様は、しばらくここで次期領主としての準備をした後、領地と王都とで年の半分づつを過ごす生活を送るらしい。お父様は相変わらず王宮勤めのようだが、お兄様と一緒に領地に戻る期間も設けるらしい。


 私は王立魔法学校へ入学したので、寮生活になる。寮生活を送るのに必要な荷物を鞄に詰めて、馬車で駅に向かった。


 お兄様の時と同じで、見送りには両親が来てくれた。ナジュム王国から帰国できなかったことは、すでに学校に話が通っているらしく、現地の駅に先生が迎えに来てくれているらしい。


 よかった、見知らぬ土地で大荷物持って歩き回りたくない。


 王立魔法学校には、学校の生徒は身分にとらわれず平等という方針があり、貴族の子息令嬢であっても身の回りの世話をする使用人を連れてきてはいけない、という決まりがある。護衛も連れてきてはいけない。なので、学校生活で必要な様々な物を詰め込んだ大荷物は自分で持ち歩かなければならないのだ。


 これ、絶対、一人で持ち歩けないんだけど。


 というぐらいの大荷物になるが、そこは、「魔法学校」なので学校に行かなくても貴族の子息令嬢であればある程度魔法が使える。魔法で鞄なり、荷物なりを軽くすれば良いのだ。平民出身の場合はそこがネックになる。近くに魔法を使える人がいないので、大荷物を苦労して持つか、荷物を最小限にしてしまうか。


 私は、お兄様に鞄に魔法をかけて貰い、色々なものがたくさん詰められ、かつ軽い鞄にしてもらった。鞄もお兄様譲りの物で、お兄様の魔法によってさらにパワーアップしていた。


 やってきた汽車に乗り、両親に見送られながら私は学校に向けて出発した。


 学校は、ランカスター王国の北部にある。汽車で3時間ほどの道のりで、深い林の奥深くにある。修道院のような尖塔が立つ建物がシンボルの学校で、敷地内で魔法学科と錬金術学科に別れている。互いの学科は交流は自由だが、あまり仲が良くない。魔法学科は貴族の集まりで、錬金術学科は平民の集まりだからだ。


 学生寮も同じ敷地内にある。各学科に三棟づつあり寮同士で成績を争っている。赤がシンボルカラーのドラグーン寮、青がシンボルカラーのセイレーン寮、黄がシンボルカラーのジャイアント寮だ。


 汽笛が鳴った。そろそろ駅に着くみたいだ。


 駅に降りたのは、私だけだった。この駅からの乗客もいないみたい。この路線は、学校と王都を繋ぐために作ったようなもので、次の駅が終着点だ。


 駅には迎えがいるはずだったけれど、どこにいるのだろうか。ホームを見渡してもそれらしき人がいなかったので、私は改札口をでた。


 改札口の近くに、黒いローブを着た男性が立っていた。いかにも魔法使いの格好をしている。


 あれ、先生なんだろうか。


 黒ローブの男性は、私に気がついたのかそっと近づいてきた。


「あなたが、デクルー家のジュリアですね?」


「そうです」


「私は、魔法学科で教師をしているウィンダムです。学校まで案内しましょう」


 学校は駅の近くにある。とはいえ、魔法や錬金術を教えている学校なので、普通の学校とは違い関係者以外を立ち入らせないために、魔法で入れないようにしているらしい。


 学校までの道のりは、石畳で覆われた道を歩く。風情のある通りだ。正門から入り、まずは職員室に案内された。


 ウィンダム先生が、先に職員室に入り戻ってくるのを廊下で待っていると、一人の女子生徒が向かいの端の廊下からこちらに向かって一目散に走り寄ってくる。

 髪色がピンクローズで肩までのストレートヘア、目が大きく、瞳の色は青色。均整の取れた肢体で牝鹿のようだ。まさに、美少女と言っても良い女生徒が、私の真正面に立つと、突然泣きながら大声で叫んだ。


「デクルー様、どうして、私をいじめるのですか!」

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